建設業法の改正が2022年10月に施行、改正の目的とポイントを解説
建設業法の改正ポイント
(1)短納期への規制
2020年7月31日に、中央建設業審議会が作成した「建設工事の適正な工期の確保をするための基準」に基づく実施が勧告されました。これに違反した場合は勧告、悪質な場合には企業名が公表されます。
(2)工期に影響を及ぼす情報提供の義務
たとえば、地盤沈下などの地中状態や騒音配慮など周辺の環境など、工期に影響を及ぼすとみられる情報提供を契約締結前に行うことが、発注側の責任として定められました。請負側でも、見積り時に発注者に工期に関わる詳細な情報の提出が求められますが、こちらは努力義務です。
(3)請負契約書の記載事項の追加
工事を行わない日(休日)や時間帯を取り決めた場合は、請負契約書に記載しなければなりません。記載することにより、法的な効力が発揮されます。
(4)社会保険への加入義務
従業員が5名以上いる場合は、個人事業主でも社会保険への加入が義務となります。社会保険への加入は建設業許可の要件にもなっているため、未加入の事業者は更新ができなくなりました。
(5)下請代金の一部現金払いを義務化
下請業者に手形払いの条件で委託する場合でも、下請代金のうち労務費にあたる金額を現金で支払うことが義務化されました。労働者への給与支払いの遅延を回避し、下請業者が受注しやすくなります。
(6)建材製造業者への勧告対応
施工不良の原因が資材の欠陥であった場合、国土交通大臣及び都道府県知事が建材製造業者に対して改善勧告や命令を出せるようになりました。改正前よりも建設業者の責任負担が軽くなります。
(7)元請による違法行為の告発
請負代金の不当な値下げ、支払期間の延長など、元請業者による違法行為を通報した下請業者を、不利に扱うことが禁じられます。
(8)監理技術者の兼務
技師捕の配置によって、監理技術者が2つの現場を兼任できるようになりました。
(9)下位業者の主任技術者の配置
下請業者はすべて、現場に「主任技術者」を配置する義務がありましたが、「特定専門工事」においては発注側との合意により、一次下請業者だけが主任技術者を配置すればよいことになりました。
(10)経営業務管理責任者の要件
建設業許可の経営業務管理責任者には、「5年以上の役員としての経営経験」が求められましたが、組織全体の管理体制によって要件を満たせばよい形に緩和されました。
(11)事業承継における合併・譲渡
建設業では、事業承継後に建設業許可の新規取得が必要となり、一旦、営業を停止しなければなりませんでした。改正により事業承継の事前認可と、相続発生から30日以内の認可申請で営業を継続できるようになりました。
<ここまでのポイント>
・短工期、工事に関する情報提供による工期の適正化
・社会保険加入、労務費の現金払いによる待遇改善
・管理技術者など配置要件の緩和、資材の責任負担軽減などの建設工事の効率化
・建設業許可の要件、事業承継の事前認可による持続可能な環境整備