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建設キャリアアップシステム原則化へ?未登録のデメリットを解説

建設キャリアアップシステム(CCUS)は、2020年度から公共工事で限定運用されていました。2023年度以降は国・自治体の公共工事に加えて民間工事でも適用されます。建設キャリアアップシステムに登録しないとどのようなデメリットがあるのでしょうか。建設キャリアアップシステムの概要と未登録のデメリットについて解説します。

目次
 -2023年度に建設キャリアアップシステム(CCUS)の原則化
 -建設キャリアアップシステムの概要と導入メリット
 (1)建設キャリアアップシステムの目的
 (2)建設キャリアアップシステムの利用料金
 (3)建設キャリアアップシステム登録の手順
 (4)建設キャリアアップシステムを利用するメリット
 -現場に入れなくなる?CCUSに登録しないデメリット
 -どのタイミングでCCUSに登録すべきか、登録時の注意点
 -CCUSは建設業DXの一環

2023年度に建設キャリアアップシステム(CCUS)の原則化

2020年3月、国土交通省と建設業4団体(日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会)の合意により、2023年度から国と自治体の公共工事に加えて民間工事でも建設業キャリアアップシステム(CCUS)を適用する方針が決定されました。
これにより、実質的にはCCUSに登録しなければ仕事に支障をきたすようになります。

国土交通省が建設キャリアアップシステム推進に取り組んできた背景のひとつに、建設業退職金共済(建退共)の掛け金未納の問題があります。従来の共済証紙を使用した納付方法では、証紙の貼り忘れなどの過失や掛け金流用などの不正が起こりやすい実態があります。2021年からスタートした建退共との一体化運用でこの問題を解消すると同時に、デジタル化による業務効率化が期待されています。

出典:CCUS、義務化へ道筋 国交省・4団体(建通新聞デジタル版)

<ここまでのポイント>
・2023年度からあらゆる工事で建設業キャリアアップシステム(CCUS)が適用される。
・CCUSの就労履歴データと建退共を一体化した運用が始まっている。

建設キャリアアップシステムの概要と導入メリット

CCUSはさまざまな工事現場で働く建設技能労働者の情報を登録し、身分証を兼ねたICカードを利用して就労履歴を記録、管理するシステムです。キャリア形成だけでなく、社会保険情報や就労履歴に紐づく建退共の掛け金の管理システム、入場管理として活用できます。

(1)建設キャリアアップシステムの目的

建設キャリアアップシステムは、建設技能者の処遇改善を将来の人材確保につなげること、業界全体の生産性向上などを目的としています。

①技能者の施工能力やキャリアを可視化し、処遇を改善する
 技能者の保有資格や就労履歴を記録し、施工能力やキャリアを可視化します。適正な処遇で技能に見合った業務に携われることをめざします。

②キャリアパスを明確にして技能者の若手人材を確保する
 就業履歴や保有資格、受講実績などの客観的な基準で技能者の能力を評価するしくみを設け、建設技能者のキャリアパスを明確にします。スキルアップが処遇の向上につながる環境を整え、「建設技能者はやりがいや魅力のある職業」という認知を促進し、若手人材の確保へとつなげます。

③事業者の事務作業を効率化する
 労務管理や建退共の納付手続きなどがデジタル化され、事業者の業務の効率化が期待できます。

(2)建設キャリアアップシステムの利用料金

建設キャリアアップシステムの利用料金について説明します技能者は登録料のみですが、事業者は登録料に加え、利用状況に応じて管理者ID利用料、現場利用料が請求されます。技能者は本人情報のみを登録する簡略型登録と保有資格や健康診断等の情報を登録する詳細型登録の2方式があり、簡略型に登録した後に詳細型に変更することもできます。

<事業者が負担する費用>

資本金 登録料(税込) 資本金 登録料(税込)
一人親方 無料 1億円~3億円未満 120,000円
500万円未満(個人事業主含む) 6,000円 3億円~10億円未満 240,000円
500万円~1,000万円未満 12,000円 10億円~50億円未満 480,000円
1,000万円~2,000万円未満 24,000円 50億円~100億円未満 600,000円
2,000万円~5,000万円未満 48,000円 100億円~500億円未満 1,200,000円
5,000万円~1億円未満 60,000円 500億円以上 2,400,000円

※新規登録時、5年毎の更新時

管理者ID利用料(税込)
※1Dあたり
法人 11,400円
一人親方 2,400円

※事業者情報、現場情報を管理する管理者ID に対する利用料金

現場利用料(税込) 1人日・現場あたり10円

※現場を登録する元請事業者が負担する技能者就業履歴情報の登録に対する利用料金
※現場に入場する技能者の人日単位の回数
※履歴情報が登録された月末締めの翌々月10日払い
※年度末と消費税率の改定時を除き、1,500円未満の場合は最大6ヶ月間まで繰り越し

<技能者が負担する費用>

登録料(税込) 簡略型 2,500円
詳細型 4,900円
詳細型への変更 2,400円

※新規登録時、10年毎の更新時
※認定登録機関での申請は詳細型登録のみ

(3)建設キャリアアップシステム登録の流れ

建設キャリアアップシステムの登録の流れを簡単に紹介します。所属会社が事業者登録を済ませ、従業員の技能者登録を代行する方法が推奨されています。上位会社が下請けとなる会社の事業者登録や技能者登録を代行することもできます。

①登録申請
インターネットと認定登録機関の2つの申請方法があります。認定登録機関では郵送のほか窓口でも登録できますが、ほとんどの認定登録機関の窓口は予約制になっていますので事前に確認しましょう。登録申請に必要な事業者確認書類を下表にまとめます。

<事業者登録の必要書類>

事業者確認書類 下の項目のうちいずれか一点
建設業許可のある法人、
個人事業主、
一人親方
建設業許可証明書の写し
・建設業許可通知書の写し
建設業許可がない法人 ・事業税の確定申告書の写し
・納税証明書と履歴事項全部証明書の写し
建設業許可のない個人事業主、
一人親方
・個人事業の開業届の写し
・納税証明書の写し
・所得税の確定申告書の写し

出典:事業者情報登録申請書の手引き

②登録内容の確認・審査~ID発行
審査完了後にIDが付与され、メールもしくは郵送で通知が届きます。通常は3週間から1ヶ月、混雑状況によりさらに長くなる場合があります。申請内容に不備があった場合は連絡がありますが、提出書類の画像が不鮮明なために再申請となるケースが多いようなのでくれぐれも注意しましょう。

③登録料の支払い
登録料の支払い確認後に登録完了の通知が届きます。支払い方法には振込みとクレジットカード決済があり、クレジットカードの方が入金確認は早いようです。

(4)建設キャリアアップシステムを利用するメリット

建設キャリアアップシステムの利用により、建設技能者と事業者の双方でメリットが期待できます。
建設技能者は経験やスキルに見合った処遇や賃金を得やすくなり、建退共の掛け金未納などのリスクもなくなります。就労時間の裏づけとなる入退場の履歴が客観的に記録されるため、過重労働や残業未払いなどのトラブルも回避できます。

事業者はCCUSのICカードによる入場管理、建退共などの事務処理がデジタル化され、生産性向上のメリットがあります。CCUSのレベル判定を技能者育成に活用できます。

出典:建設キャリアアップシステム(一般財団法人建設業振興基金)

<ここまでのポイント>
・CCUSは技能者の本人情報、社会保険、就労履歴、保有資格などを管理するシステム
・建設技能者には処遇や賃金を守り、キャリアアップの道筋ができる
・事業者にはデジタル化による事務作業の効率化
・業界全体には人材確保のための環境づくり

現場に入れなくなる?CCUSに登録しないデメリット

CCUSに登録しない場合の最大のデメリットは受注の減少です。まず、登録していないと公共工事を受注できなくなります。経営事項審査でも加点項目となるため不利になります。

ゆくゆくは民間工事でも元請けからCCUS登録を要請されるでしょう。対応しないと受注機会が減少し、極論としてはCCUS未登録の技能者は現場に入れなくなる可能性もあります。外国人技能実習生はすでに義務化されていますので、受け入れを考える場合は登録が必須になります。

<CCUSに登録しない場合のデメリット>
・公共工事を受注できない
・民間工事の受注減
・未登録の技能者は現場に入場できなくなる可能性
・外国人技能実習生の受け入れができない
・経営事項審査で加点されない

<ここまでのポイント>
・民間工事の受注も減少する可能性がある
・将来的には未登録の技能者は現場に入場できなくなる可能性も

どのタイミングでCCUSに登録すべきか、登録時の注意点

2023年1月の経営事項審査の改定でCCUS登録が加点項目として追加されます。これに対応しておくと入札で有利になります。1月に更新予定がある場合は、2022年12月までに登録完了できると安心ですね。登録完了までに1ヶ月以上かかる可能性がありますので、逆算して11月中に登録申請するのがよいでしょう。

事業者登録で注意したいのが一人親方と法人、個人事業主の区別です。従業員がいなくても法人化していれば法人の扱いになります。開業届を出している個人事業主も同じです。一人親方として事業者登録すると不正と判断されて、登録を抹消される可能性があります。

<ここまでのポイント>
・2023年1月の経営事項審査に間に合わせるには11月頃から準備すると安心。
・法人もしくは個人事業主が一人親方として事業者登録すると登録を抹消される。

CCUSは建設業DXの一環

建設キャリアアップシステムにはさまざまなメリットが期待できます。しかし、小規模事業者にとっては登録料、利用料などが負担となり、登録の手間が増えるのも事実です。そのため否定的な意見も多く、普及が進みませんでした。

先行き不透明な部分はあっても、CCUS普及を機に建設業界全体のDXが加速化される期待もあります。システムに慣れるまでは負荷に感じるかもしれませんが、デジタル化の恩恵を実感できるタイミングもあるはずです。蓄積されたデータを最大限に利活用して生産性向上をめざしましょう。

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