建設投資全体が73兆円と堅調に推移する一方、公共工事の受注環境は予断を許しません。法改正対応に追われる中、限られた人員で確実に受注するには「精密な積算」が鍵となります。最新の市場データと法改正動向を踏まえ、中小規模の設備業者が公共工事で勝ち残るための積算戦略を解説します。
目次
-建設投資は増加、でも公共工事の”波”は激しい
・民間依存のリスク、公共工事は「経営の安定剤」
・2024年度は73兆円規模も、公共工事の受注環境は厳しい
・競争激化で「とりあえず入札」では勝てない
-法改正ラッシュが積算業務を直撃している
・2024年4月:働き方改革による時間制約
・2024年6月:第三次・担い手3法の成立
・法改正対応で生まれる「情報格差」
-公共工事の受注確度を高める「精密積算」とは
・最低制限価格制度を理解する
・「順算」と「逆算」を使い分ける重要性
・増減率と補正係数の調整がカギ
・人手不足時代の業務効率化が不可欠
-公共工事の受注確度アップの5つのポイント
・①積算精度1%の差が受注率を大きく変える
・②積算ツールは「戦略投資」である
・③「勝てる案件」を見極める力
・④属人化リスクからの脱却
・⑤データ蓄積と継続的な改善
-変化をチャンスに変える~「攻めの積算」で差別化を
建設投資は増加、でも公共工事の”波”は激しい
民間依存のリスク、公共工事は「経営の安定剤」
2024年度の建設投資見通しは73兆200億円(前年度比2.7%増)と、過去10年で最高水準です(国土交通省発表)。このうち民間投資は46兆8,100億円(前年度比2.2%増)と堅調ですが、景気変動の影響を受けやすい特性があります。
一方、政府投資は26兆2,100億円(同3.7%増)で建設投資全体の36%を占めます。比較的安定した発注が見込める公共工事は、経営基盤を強化する「経営の安定剤」といえます。
2024年度は73兆円規模も、公共工事の受注環境は厳しい
実際の公共工事受注は厳しい環境にあります。大手建設会社の2024年度受注では、民間工事が10%増と好調な一方、官公庁工事は5%減となっています(日本建設業連合会調査)。特に地方自治体からの受注は9.2%減と大きく落ち込み(国土交通省・建設工事受注動態統計調査)、過去20年間で官公庁工事の割合低下が顕著です。
さらに深刻なのは、予算の「実質的な縮小」です。公共事業予算は名目6兆円で横ばいですが、資材価格や労務費の上昇により実質的な事業量は減少しています。2024年度の直轄工事では40%で工事数量の減少や打ち切りが発生し、主な理由は予算制約です(日本建設業連合会調査)。
月次でも変動が激しく、2024年6月の建設受注額は前年同月比18%減と大幅減少しています(日本建設業連合会調査)。年度単位で予算が確保されても、発注時期の偏りや地域差により受注機会にバラつきがあるのが実情です。
競争激化で「とりあえず入札」では勝てない
受注環境が厳しさを増す中、入札競争も激化しています。人手不足で受注できる会社が限られる一方、公共工事の安定性を求める事業者の参入も増加し、限られた受注機会を多くの事業者が競い合う構図です。
こうした中で「とりあえず入札」では勝てません。求められるのが「精密積算」です。精密積算とは、最低制限価格の算出要素を1%単位で緻密に計算し、失格や不落札を防ぐ高精度な積算手法です。限られた受注機会を確実に掴むため、精密積算による入札価格の算出が受注率向上の決め手となります。
<ここまでのポイント>
・政府投資が建設投資全体の36%を占め、公共工事は経営の安定剤として重要
・官公庁工事は5%減、地方自治体は9.2%減と受注環境は厳しい
・予算は横ばいでも資材高騰により実質的な事業量は減少
・受注機会が限られる中、精密積算による戦略的入札が受注の鍵
出典:
「令和6年度(2024年度)建設投資見通し」(国土交通省・2024年8月発表)
「建設工事受注動態統計調査」(国土交通省・毎月公表)
「建設工事受注動態統計調査報告(大手50社調査)令和6年度計」(国土交通省)
「2024年度建設受注調査」(日本建設業連合会・2025年4月発表)
「2024年度直轄工事の設計変更に関する調査」(日本建設業連合会・2024年11-12月実施)
「建設業ハンドブック 2. 企業経営」(日本建設業連合会)
法改正ラッシュが積算業務を直撃している
2024年4月:働き方改革による時間制約
建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、原則月45時間・年360時間の制約下で、違反すれば罰則(6ヶ月以下の拘禁または30万円以下の罰金)が科せられます。工期設定の見直しや週休2日の推進により現場の稼働時間は制約される一方、積算業務の量は減りません。同じ仕事量を少ない時間でこなすため、業務効率化が急務です。
関連記事:【どうする?2024年問題】時間外労働 上限規制②業務の棚卸ししと適性化による残業削減
2024年6月:第三次・担い手3法の成立
建設業法、品確法、入契法の一体改正により、積算業務にも影響が出ています。主な変更点は以下の通りです。これらの改正に伴い、積算や計算方法が複雑化し、手集計や紙の記録だけでは正確な積算が困難になっています。
• 標準労務費の作成・勧告
中央建設業審議会が労務費の基準を策定
• 著しく低い労務費の禁止
適正な労務費を下回る見積もりは違反対象
• 材料、労務、経費の明確化
見積書における内訳明示が努力義務化
出典:「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(国土交通省・2024年6月14日公布)
関連記事:【入札対策】公共工事 入札の勝率を高める方法と建設業法改正の影響
法改正対応で生まれる「情報格差」
法改正への対応が競争力の格差を生んでいます。最新の基準に即座に対応できる企業は適正対応で入札できる一方、対応が遅れた企業は計算ミスによる失格リスクや、過度に高い入札価格で受注機会を失います。積算ツールでは法改正への対応が自動化されるため、こうした情報格差を埋めることができます。
<ここまでのポイント>
・2024年4月の時間外労働規制で積算業務の効率化が急務
・第三次・担い手3法(2024年6月成立)で積算内容が変更
・法改正対応の遅れが企業間の競争力格差を生む
公共工事の受注確度を高める「精密積算」とは
最低制限価格制度を理解する
公共工事では、過度な価格競争(ダンピング)を防ぎ工事の品質を確保するため、最低制限価格が設定されています。最低制限価格とは入札における下限価格で、これを下回る入札は自動的に失格となります。
この価格は予定価格の一定割合(通常80〜90%程度)で算出されますが、計算式には以下の変動要素が含まれます。それぞれの計算が0.1%ずれるだけでも、失格(低すぎ)や落札失敗(高すぎ)のリスクがあります。
• リース料
• 発生材処分費
• スクラップ費
• 共通仮設費積上げ
• 現場管理費率積上げ
• 一般管理費率積上げ
「順算」と「逆算」を使い分ける重要性
積算には2つのアプローチがあります。予定価格が事前公表の自治体では、逆算スキルが受注率を大きく左右します。複雑な計算でミスも出やすいため、ツールによる自動計算が現実的な選択肢です。
| 順算 | 直接工事費から共通仮設費、現場管理費、一般管理費を積み上げる。 精度は高いが時間がかかる。 |
| 逆算 | 予定価格から最低制限価格を推定し、適正な入札価格を導出する。 予定価格事前公表の自治体では極めて重要。 |
関連記事:予定価格事前公表入札は基本的な積算知識とツール活用で落札できる
補正係数の選択がカギ
最低制限価格の算出では、共通仮設費・現場管理費・一般管理費の「補正係数」の設定が重要です。補正係数とは、工事の規模・難易度・地域特性などに応じて費用を調整する数値で、積算基準で定められています。これらのパラメータを正確に把握し適切に調整することで、最適な入札価格に近づきます。この調整作業は経験と知識が必要ですが、ツールを使えば過去のデータを活用した精度の高い設定が可能になります。
人手不足時代の業務効率化が不可欠
建設業就業者は483万人とピーク時比約30%減少。55歳以上が36.6%を占め、高齢化が進んでいます(国土交通省・令和5年データ)。限られた人員で多くの案件に対応するには、積算ツールの活用が有効です。
■ツール活用のメリット
・1案件あたりの積算時間を短縮
・ツールのアップデートで法改正や最新基準に自動対応
・経験や知識を問わず、一定水準の積算が可能に(属人化の解消)
・人的ミス防止で精度向上と失格リスク低減
<ここまでのポイント>
・最低制限価格の計算は0.1%のずれが失格や落札失敗につながる
・予定価格事前公表の自治体では逆算スキルが重要
・就業者の減少・高齢化が進む中、積算ツールによる効率化が必須
関連記事:ゼロから始める設備業の入札対策公共工事に参入したい経営者様必見!
出典:「労働力調査」令和5年(2023年)平均、国土交通省資料( 総務省)
公共工事の受注確度向上の5つのポイント
①積算精度0.1%の差が落札率を大きく変える
公共工事の利益率は民間工事と比較すると低い場合もありますが、確実性と継続性があります。積算精度0.1%の違いが落札の分かれ目になります。たとえば年間50件の入札で落札率が5%向上すれば2〜3件の受注増となり、1件500万円なら年間1,000万〜1,500万円の売上増加です。
②積算ツールは「戦略投資」である
積算ツールは単なる効率化ツールではなく、受注確率を上げるための戦略投資です。以下の効果により初期投資を回収できます。
• 受注件数の増加:精密な積算による入札成功率の向上
• 人件費の削減:積算業務の時間短縮による工数削減
• 機会損失の防止:計算ミスによる失格を防ぎ、受注チャンスを確実に掴む
• 教育コストの圧縮:若手・中堅社員でも高精度な積算が可能
③「勝てる案件」を見極める力
ツールによる高速積算が可能になると、短時間で複数の案件を計算できます。その結果「勝てる案件」と「厳しい案件」の見極めがしやすくなり、限られたリソースを受注確率の高い案件に集中投下することで全体の受注効率が向上します。
④属人化リスクからの脱却
社長や特定のベテラン社員しか積算できないという属人化は、中小規模の設備業では珍しくありません。これが受注機会のロスにつながっています。ツール活用で積算業務が標準化され、組織としての競争力が高まります。
関連記事:建設業、設備業の見積作成の効率化と競合する際の対応
⑤データ蓄積と継続的な改善
ツール導入の真価は、過去の入札データを蓄積し継続的に改善できる点にあります。成功した案件、失格した案件、惜しくも落札できなかった案件など、すべての結果を記録・分析することで自治体ごとの傾向が見えてきます。 たとえば「A市は最低制限ラインが国より低めの傾向」「B町は最低制限価格が予定価格の90%前後で安定」といった地域特性を把握できれば、次回以降の精度が向上します。PDCAサイクルの確立により、入札を重ねるほど競争力が高まる仕組みです。ノウハウを蓄積して、特定の人に依存せず、会社全体の受注力が底上げされます。
<ここまでのポイント>
・積算精度の向上が売上増につながる
・積算ツールは受注確率向上のための戦略投資
・属人化リスクを解消し、組織としての競争力を強化
・過去データの蓄積と分析で、継続的に受注アップ
変化をチャンスに変える~「攻めの積算」で差別化を
設備投資は増加傾向ですが、公共工事は不安定な側面があります。法改正対応を踏まえた精密な積算が受注確度アップの最適解です。 公共工事積算ツール「Smart-P」のような専門ツールは、最低制限価格の順算・逆算を瞬時に行い、法改正にも自動対応します。変化をチャンスに変え安定した経営基盤を築くために、今こそ積算業務のDX化を検討すべきタイミングです。
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