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  4. 【建設業法改正】改正ポイントとデジタル活用による対策を徹底解説

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 令和6年から段階的に施行されている改正建設業法。労働環境の改善や取引の適正化など、建設業界の持続可能な発展をめざす一方、令和7年中で施行される改正内容では、建設業界の商習慣に影響する内容が含まれています。改正法対応に不安を感じる事業者に向けて、改正の背景のおさらいから最新情報、そしてデジタル技術を活用した効率的な対応策まで、建設業法改正を徹底解説します。

目次
-2025年12月までに完全施行!改正建設業法
-段階的に施行される改正内容
-改正建設業法の最新情報
・5月時点の公式発表に基づいた最新情報
・最新情報を入手する方法
-改正建設業法対策に役立つデジタル活用例
・モバイルデバイスを活用した現場管理の効率化
・積算見積と工事原価管理のデジタル化で資材価格変動に対応
・適切な労務管理や安全対策を促進する勤怠管理
-改正建設業法の対策は最新情報を知ることから!

2025年12月までに完全施行!改正建設業法

改正建設業法の背景と目的のおさらい

 令和6年から改正建設業法が段階的に施行されています。この改正は、建設業界の長年の課題である労働環境の改善、取引の適正化、そして生産性向上をめざす取り組みです。

 建設業法改正の背景には、長年の課題である人手不足が解消できない中での働き方改革への対応、担い手不足による建設業の持続可能性のリスクといった緊急性の高い重点課題があります。特に中小規模の建設業者では、人手不足倒産も増え始めており、改正への対応が経営課題の解決につながる期待もあります。

 すなわち、建設業法改正は単なる規制強化ではなく、業界全体の健全な発展を促す契機となるべきもので、特に注目すべきは法改正の中にデジタル活用が盛りこまれている点です。ICTツールやデジタルプラットフォームを活用することで、改正法への対応を進めることが、生産性向上や業務効率化につながる構造になっているのです。

<ここまでのポイント>
・建設業法改正は単なる規制強化ではなく、業界全体の健全な発展のための取り組み。
・改正法対応が、生産性向上や業務効率化につながる。

段階的に施行される改正内容

 建設業法改正は、令和6年9月から令和7年12月までの期間で段階的に施行されます。すでに施行済みの範囲も含めて、それぞれの施行日とその内容を確認していきます。

令和6年9月1日施行:処遇改善や労務費基準の設定

 令和6年9月に施行された建設業法改正の主なポイントは以下の通りです。

1.労務費の的確な反映
 労働者の処遇改善の原資を確保する目的で、下請け会社が受けとる請負代金に適正な労務費が反映されるよう、発注者と受注者が必要な協議を行う努力義務が新設されました。従来は発注者から価格交渉を受けた際に労務費を削減する傾向が見られたため、これを解消するのが狙いです。

2.建設工事従事者の処遇改善
 建設工事に従事する労働者の賃金その他の労働条件、安全衛生その他の労働環境の改善に努めなければならないことが、建設業者の義務として明確化されます。これにより、業界全体の労働環境の底上げが期待されます。

3.施工体制台帳の記載事項の追加
 「工事に従事する者の処遇の状況」として、社会保険加入状況や賃金支払い状況などを施工体制台帳に記載することが求められるようになりました。これにより、建設工事従事者の処遇の透明性が高まり、不当な処遇への抑止力になることが期待されます。

令和6年12月13日施行:資材価格高騰対応や契約条件の明記

 令和6年12月には、主に契約の適正化に関する内容が施行されました。

1.資材価格等の変動に伴う請負代金の変更
 今回の改正では、請負代金の変更に関する算定方法の明確化が求められています。この改正により、資材価格の変動に対する対応がより透明化され、請負業者と発注者の間で適正な価格調整が行われることが期待されています。単品スライド条項とは資材価格の変動に対応する仕組みという点では同じですが、適用範囲や調整方法に違いがあります。

2.建設工事の請負契約の内容に関する情報提供
 発注者は、請負契約の締結前に、受注予定者が適正な見積りを行うために必要な情報を提供する義務が強化されました。特に、資材価格の変動や工期に影響を及ぼす可能性のある事象について、発注者から通知することが求められます。この改正により、建設業界の見積と契約に関する透明性が担保され、契約の公正性が確保されることが期待されています。

3.請負契約の締結に関する基準の明確化
 建設工事の請負契約の締結に関する基準(工期、請負代金の額等)について、中央建設業審議会が基準を作成し、その遵守を促進することが明記されました。これは、公正な契約締結のためのルールを定めたものです。契約書の記載事項の明確化や、契約締結時の適正な見積もり期間の確保、不当に低い請負代金の禁止などが含まれます。

令和7年12月14日までに施行:ICT活用による効率化と短工期契約禁止

 

 令和7年12月までに施行される改正にはすでに決定されたものと、現在検討中のものがあります。概要をまとめます。

1. 労働者の処遇改善(2025年7月〜12月段階的施行
 標準労務費の勧告制度が強化され、標準労務費の適用範囲が民間工事にも適用される方向で検討されています。また、職種別の標準労務費の設定が進められ、業種ごとの適正な賃金水準が示される予定です。新たな基準と比較して標準労務費を著しく下回る契約を締結した場合、発注者への勧告・公表が強化されます。あわせて技能者の資格制度の見直しが進められ、資格取得を促進するための補助制度が導入される予定です。

2. 資材価格変動への対応(2025年9月施行)
 資材価格の急激な変動に対する適切な対応を確保するための規定が強化されます。

・請負契約書への価格変更条件の明記が義務化
 資材価格の急激な変動に対する適切な対応を確保するための規定が強化されます。
具体的には、契約時の価格変動リスクに対応するため、請負契約書への価格変更条件の明記が義務化され、請負代金の変更方法を契約書に明記することが求められます。 価格変動時のトラブルを防ぎ、適正な価格調整が可能になります。

・「おそれ情報」の通知義務
 資材価格の高騰が予想される場合、受注者は発注者に対して、価格変動の根拠となるデータを含む、「おそれ情報」の通知する義務を負います。

・請負代金の自動調整制度の導入
 一定割合以上の資材価格変動が発生した場合、請負代金の自動調整を可能にする規定を追加することが推奨されます。たとえば、契約時の資材価格と比較し10%以上の変動が発生した場合、請負代金の変更が自動的に適用されるといった仕組みです。

3. 働き方改革・生産性向上(2025年10月施行)
 監理技術者の専任義務が合理化され、一定条件のもと、複数現場の兼任を認める範囲を拡大されます。
たとえば、ICT(遠隔監視技術)の活用などによって、専任要件が緩和されます。

4.公共工事の適正化(2025年12月施行)
 入札・契約の透明性向上をめざし、公共工事の入札時に、発注者の適正な価格設定を求める規定が追加されます。また、効率的な情報管理を促進するため、施工体制台帳の電子提出が義務化されます。

<ここまでのポイント>
・改正内容が検討中のものもあり、最新情報をチェックする必要がある。

改正建設業法の最新情報

 段階的な施行に向けて、建設業法改正の情報は頻繁に更新されています。改正法に適切に対応するために最新の動向を把握することが重要です。もっとも信頼性の高い情報ソースは、国土交通省が発表するガイドラインなどの資料ですが、読み慣れていないとわかりづらい部分もあります。さまざまな情報源を活用して、適切な対応を検討することが重要です。

・国土交通省のウェブサイト
建設業法改正に関する最新情報やガイドライン、Q&Aなどが更新されています。

参考:建設産業・不動産業:建設業法・入契法改正(令和6年法律第49号)について – 国土交通省

参考:令和6年12月施行の建設業法及び入契法の改正概要について(国土交通省)

・セミナーや勉強会などの情報提供
 国土交通省の資料を読むのが大変という方には、建設業の業界団体、建設業向けの商材やサービスを提供する企業、士業などの専門家によるセミナーや勉強会がお奨めです。法改正の最新情報に加えて具体的な対策に役立つ方法も入手でき、同業者との情報交換の場にもなります。

石田データサービスの改正建設業法Webセミナー(受講無料)
『2025年、法改正で建設業界が激変する!?』今、改正建設業法を知って備えるとき!~建設業界の商慣行が変わる~

<ここまでのポイント>
・国土交通省のガイドラインは信頼性が高いが、読み慣れていないとわかりづらい。
・苦手な人は、わかりやすく解説してくれるセミナーや勉強会がお奨め。

改正建設業法対策に役立つデジタル活用例

 建設業法改正への対応に役立つ、デジタル活用の事例を紹介します。

モバイルデバイスを活用した現場管理の効率化

 施工体制台帳の記載事項追加や電子提出への対応には、工事管理システムの導入が有効です。現場の状況をリアルタイムで把握し、必要な情報を取得・更新できます。タブレットやスマートフォンの活用により、現場写真の管理、施工状況の記録や労働環境の管理が格段に効率化されます。

積算見積と工事原価管理のデジタル化で資材価格変動に対応

 資材価格変動に伴う請負代金変更請求や適正な工期設定に対応するには、積算見積から工事原価管理の各プロセスでコストや利益を可視化して把握し、資材価格の市場動向を見ながら管理していく必要があります。工事原価管理システムを、建設物価データなどとあわせて活用することで「おそれ情報」の提供もスムーズになります。

適切な労務管理や安全対策を促進する勤怠管理

 働き方改革で客観的な勤務時間の記録が求められていますが、現場の進行状況と勤怠管理を一元化することで工事管理と労務管理を紐づけられ、生産性向上や安全対策に役立てることができます。
 また、IoTセンサーによる作業員の動態把握や、AIによる危険予測など、建設現場から収集したデータを分析し、生産性向上や安全対策に活用する取り組みも進んでいます。建設業法改正で求められる「建設工事従事者の処遇改善」や「安全衛生その他の労働環境の改善」にも貢献します。

<ここまでのポイント>
・施工管理台帳の記載事項追加や電子提出の義務化によりデジタル化は必須。
・デジタル活用により、法改正への対応と生産性向上を両立できる。

改正建設業法の対策は最新情報を知ることから!

 建設業者にとっては頭を悩ませることも多い建設業法改正ですが、改正によって、業界全体の健全化と持続可能性の向上が期待されています。特に、労働環境の改善や取引の適正化は、中小建設業者にとっても長期的にはメリットをもたらすでしょう。

 建設業法改正は単なる規制強化ではなく、業界全体の変革を促す取り組みです。最新情報をキャッチアップしながら、デジタル技術も積極的に活用し、この変革を自社の成長につなげていきましょう。

 デジタル活用による法改正への対応をお奨めしていますが、同時に経営課題の解決も図ることができます。たとえば、業務効率化による人手不足対策やデータ活用による経営判断の精度向上につながります。経営者の皆さんがすぐに取り組むべきことは、自社の現状を把握し、改正法への対応状況を確認することです。5つのステップで対応しましょう。

①改正建設業法の内容を正確に理解する
②自社の現状と改正法の要求事項とのギャップを分析する
③優先順位をつけて対応計画を立てる
④必要に応じてデジタルツールの導入を検討する
⑤社内教育を実施し、全社的な取り組みとして推進する

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