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  4. 建設業の8割が直面する属人化リスクとDX解決策業務標準化の7ステップ

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 「社長がいないと見積が出せない」「ベテランが休むと現場が回らない」──こうした属人化の問題は、あなたの会社だけではありません。建設業の74.1%が業務の属人化を実感し、業務効率低下や従業員負担増加といった深刻なリスクに直面しています。中小企業における属人化の3つのリスクと、DXを活用した解決アプローチ、今日から実践できる業務標準化の7ステップを具体的に解説します。

目次
-業務の属人化がもたらす生産性低下とリスク
 ・中小設備業での属人化の典型的なパターン
 ・属人化が引き起こす3つの深刻なリスク
 ・なぜ中小設備業で属人化が起こりやすいのか?
-DXによる属人化解消のアプローチ
 ・中小企業こそDXで属人化を解消すべき理由
 ・DXによる属人化解消の3つのアプローチ
-DX推進で期待できる効果
 ・業務のスピードアップ
 ・社員の負担軽減と定着率向上
 ・サービス品質の標準化と業務の円滑化
 ・経営判断のスピード向上
-小さく始める業務標準化の7ステップ
 ・ステップ1:「困っていること」を書き出す
 ・ステップ2:業務の流れを整理する
 ・ステップ3:「これなら他の人でもできる」業務を選ぶ
 ・ステップ4:簡単なマニュアルを作る
 ・ステップ5:無料や安価なツールから始める
 ・ステップ6:1つの業務で試してみる
 ・ステップ7:うまくいったら横に広げる
-属人化解消は段階的なDX推進がカギ

業務の属人化がもたらす生産性低下とリスク

 「社長がいないと見積が出せない」「ベテラン職人が急に休むと現場が回らない」──こうした状況を裏づける調査があります。

 2025年1月の調査では、建設業の管理職の74.1%が「業務の属人化」を感じており、「従業員の負担増加」や「業務効率の低下」といったリスクを強く認識しています。

出典:「人材不足と業務の属人化」に関する調査(株式会社SMB)

中小設備業での属人化の典型的なパターン

業務ごとに属人化のパターンを洗い出してみます。

見積作成社長や特定のベテラン社員しか積算できない
個人ごとの基準で見積もりをしている
施工管理現場責任者が個人的なノートやメモで管理している
報告書作成に時間がかかっている
顧客対応「あの会社のことは○○さんに聞かないと分からない」状況
代理対応ができない、担当者不在で対応が遅れることがある
保守業務過去の工事履歴や特殊な対応が個人の記憶にしか残っていない
社外との調整特定の社員の人脈や関係性に依存している
担当者が離職すると取引が減少する

属人化が引き起こす3つの深刻なリスク

 属人化がもたらすリスクは想像以上に深刻です。業務停止、効率低下、品質のばらつきという3つの側面から、その実態を見ていきましょう。

リスク①:ナレッジ喪失による業務停止
「担当者不在で資料の場所がわからない」「引き継ぎ不足で顧客に迷惑をかけた」というケースは多く見られます。少人数の会社では、ベテラン社員の退職や急病が即座に事業に影響します。中小規模や家族経営では経営者に業務が集中し、事業継続リスクにもなっています。

リスク②:業務効率の大幅な低下
特定の社員しか対応できない業務があると、その人が休めなくなり、他の社員が手伝えずに待機時間が発生します。会社全体の対応力が制限され、納期厳守のための残業増加や効率低下につながります。

リスク③:品質のばらつきと管理困難
「特定の技術者のみができる業務があり、品質にばらつきが生じた」というケースもあります。担当者によって見積金額や施工方法が変わると、利益率が安定せず、顧客からの信頼も得にくくなります。若手が育ちづらく、特定のベテランに依存する悪循環に陥りやすいのも問題です。

なぜ中小設備業で属人化が起こりやすいのか?

 先の調査では、属人化の原因として「人材不足」が第1位に挙げられています。中小企業の環境や文化の影響が大きく、大手企業が属人化解消のために整備してきた仕組みが整っていないことも一因です。

実態発生する課題
目の前の仕事で手一杯若手の指導やマニュアル作成に時間を割けない
専門性の高さ技術力の高さゆえの「見て覚える」文化が根強い
少数精鋭の体制一人が複数の役割を担っており、引き継ぎが難しい
文書化や情報共有の仕組みがない担当者の頭の中だけに情報がある

<ここまでのポイント>
・建設業の74.1%が業務の属人化を実感
・中小企業は少人数ゆえに影響が深刻
・属人化は事業継続リスクにも直結する

DXによる属人化解消のアプローチ

中小企業こそDXで属人化を解消すべき理由

 「小さい会社だからDXは必要ない」と考える経営者もいますが、少人数だからこそ一人の不在が大きく影響します。デジタル活用で業務効率を最大化する体制を作れます。

 先の調査でも、属人化解消に向けた取り組みとして「業務フローの見直しと簡素化(45.3%)」「業務マニュアルの作成・整備(41.0%)」「業務の分担化やチーム化の推進(40.8%)」が必要と認識されており、これらの取り組みにはDXが効果的です。

DXによる属人化解消の3つのアプローチ

 属人化解消のポイントは、「見える化」「一元管理」「ノウハウの可視化」です。この3点をDXで解決すると属人化はなくなります。

属人化解消のアプローチ①:業務の見える化
 「誰が何をしているか分からない」状態から脱却するため、業務の流れを可視化するのが最初の一歩です。業務プロセスをデジタル化することで、誰が担当している案件でも情報を把握できます。

属人化解消のアプローチ②:情報の一元管理
 見積書、図面、顧客情報、工事履歴などを個人のパソコンやノートではなく、関係者がアクセスできるシステムやクラウド上で一元管理します。必要に応じて情報にアクセスでき、「あの人に聞かないと分からない」状態を解消できます。

属人化解消のアプローチ③:ノウハウの可視化・言語化
ベテランの頭の中にしかない知識や技術を、写真・動画・チェックリストなどの形で残します。スマホで動画撮影するだけでも立派な教材になり、動画に慣れた若手にも理解しやすくなります。

 これらのアプローチは「業務フローの見直し」「マニュアル整備」「業務の分担化」といった具体的な施策に落とし込めます。

参考記事:施工管理者の業務はもっと効率化できる!施工管理の業務棚卸し

<ここまでのポイント>
・少人数の会社こそDXによる属人化解消が効果的
・「見える化」「一元管理」「ノウハウの可視化」が属人化解消のポイント

DX推進で期待できる効果

 デジタル化による属人化解消で期待される効果として、「業務効率化の促進(61.8%)」が最も多く、次いで「ノウハウや知識の共有・蓄積(59.2%)」「特定の社員への業務集中の緩和(53.6%)」が挙げられています。

業務のスピードアップ

 デジタル化の最大のメリットは検索です。情報を探す時間が大幅に削減され、見積書や報告書作成が短縮されます。外出先からでも必要な情報にアクセスでき、顧客対応の迅速化や代理対応が可能になります。

社員の負担軽減と定着率向上

 特定の社員への業務集中が緩和され、長時間労働の解消や休暇が取りやすくなります。若手社員も早く仕事を覚えられるため、定着率が向上します。

サービス品質の標準化と業務の円滑化

 社内のノウハウがデジタル化されることで品質が標準化され、引き継ぎもスムーズになります。属人化がなくなり、組織全体の対応力が高まります。

経営判断のスピード向上

 売上データ、案件の進捗状況、利益率などがリアルタイムで把握でき、迅速な経営判断が可能になります。感覚ではなく、データに基づいた意思決定ができます。

参考記事:設備業の職人高齢化対策 デジタル活用で担い手不足を解決する

<ここまでのポイント>
・デジタル化で業務スピードが大幅に向上
・社員の負担軽減と定着率向上につながる
・データに基づいた迅速な経営判断が可能に

小さく始める業務標準化の7ステップ

 属人化解消に向けた「業務フローの見直し」「マニュアル整備」「業務の分担化」について、中小企業が無理なく実践できる7ステップを紹介します。

ステップ1:「困っていること」を書き出す

 日々の業務で困っていることを書き出しましょう。社員が集まった時に話し合うだけでも多くの課題が見えてきます。影響が大きく、解決しやすそうなものを選びます。

例:特定の誰かがいないと分からないこと/探すのに時間がかかるもの/何度も同じことを聞かれること/引き継ぎに苦労したこと

ステップ2:業務の流れを整理する

 「誰が・いつ・何を・どうしているか」を紙に書き出します。見える化でボトルネックが明確になります。

例)見積作成の流れ
①顧客から問い合わせ → 社長
②積算~見積書作成 → ベテラン社員A
③提出 → 社長

ステップ3:「これなら他の人でもできる」業務を選ぶ

 一度に全てを標準化する必要はありません。以下の条件に合う業務から段階的に始めましょう。

・作業手順が比較的明確
・頻度が高い(週に何度も発生)
・他の人が対応できると効果が大きい

ステップ4:簡単なマニュアルを作る

 立派なマニュアルを作ろうとして挫折する例が多いです。最初はA4用紙1枚程度で十分。「60点でいいからすぐ作る」ことを目指しましょう。

・手順を箇条書きに(「まず○○、次に△△」)
・写真や図を活用(スマホ撮影で十分)
・注意点を赤字・太字で目立たせる
・困ったときの連絡先を明記

ステップ5:無料や安価なツールから始める

 高額なシステムは不要です。無料版で試してから導入検討しましょう。IT導入補助金で負担を抑えられる場合もあります。

例)チャットツール/クラウドストレージ(OneDrive、Googleドライブ)/スケジュール共有(Googleカレンダー)/スマホの写真・動画

ステップ6:まずは試してみる

 1つか2つの業務で期間を決めて試し、うまくいかない点は修正しながら続けます。小さい会社だからこそ柔軟に改善できるのが強みです。

 検証ポイント:実際に使ってどうか/時間は短縮されたか/他の社員も対応できるようになったか

ステップ7:うまくいったら横に広げる

 1つの業務で成果が出たら、同じやり方で他の業務にも展開します。小さい範囲から確実に進めることが成功パターンです。

例)見積作成がうまくいった → 施工報告書でも実施/写真での記録が便利 → 他の現場でも活用

参考記事:クラウドとモバイル活用で変わる!工事管理の効率化と生産性向上

属人化解消は段階的なDX推進がカギ

 業務フローの見直し、マニュアル整備、業務の分担化によって属人化を解消できます。成功の秘訣は「完璧を目指さず、できることから小さく始める」です。紙に業務を書き出す、スマホで作業手順を撮影する──ここからでも十分なスタートです。

 こうした取り組みに拾い出しや積算見積、工事原価管理などのDXツールを組み合わせることで、属人化解消はさらに加速します。業務効率化だけでなく、社員の働きやすさ向上、若手の育成、事業承継の円滑化にもつながる会社の未来への投資です。

 「うちは小さいから」ではなく、「小さいからこそ」DXに取り組む価値があります。今日から一歩、踏み出してみませんか?

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