改正建設業法は2025年12月に全面施行されましたが、その後も運用のアップデートが続いています。2026年1月の遵守ガイドライン改定や監督強化の実態など、全面施行後に確定した実務ポイントを整理したうえで、自社にできる対応を解説します。
目次
1. 改正建設業法、2025年12月の全面施行で何が確定したか
(1) 受注者を守る禁止規定が全面的に整った
(2) 施行令改正で「勧告対象となる工事」の範囲が具体化された
2. 2026年1月、遵守ガイドラインが改定された
(1) 「建設業法令遵守ガイドライン」(元請・下請間、第12版)の改定
(2) 「発注者・受注者間ガイドライン」(第8版)も同時に改定
3. 改定ガイドラインが示す実務上の変化
(1) 原価割れ契約への監督が強化されている
(2) 発注者が注意すべき点:不当な値引き・無理な短工期の禁止
(3) 「おそれ情報」の通知という仕組み
4. 実務対応として何をすればいいか
(1) 見積書の内訳を明示できる体制づくり
(2) 「おそれ情報」の根拠となる情報を日頃から整理しておく
まとめ|改正法は「施行して終わり」ではない
1. 改正建設業法、2025年12月の全面施行で何が確定したか
改正建設業法は2024年6月に成立し、段階的に施行が進められてきました。2025年12月12日の全面施行により、すべての規定が出そろいました。
(1) 受注者を守る禁止規定が全面的に整った
●受注者に対する不当に低い請負代金による契約締結の禁止が明文化された
●受注者に対する著しく短い工期による契約締結の禁止も明文化された
●建設工事の見積書に記載すべき事項が明記され、通常必要と認められる労務費等を著しく下回る見積り・見積り変更依頼の禁止も定められた
●出典候補:国土交通省「建設業法・入契法改正(令和6年法律第49号)について」(URLは執筆時に一次情報を確認して確定)
(2) 施行令改正で「勧告対象となる工事」の範囲が具体化された
国土交通大臣等の勧告の対象となる請負契約について、施行令改正により金額の下限が定められた
●下限額は500万円(建築一式工事の場合は1,500万円)とされ、小規模な工事を除きほぼすべての工事が対象になる
●出典候補:施行令改正に関する国土交通省の報道発表資料(URLは執筆時に一次情報を確認して確定)
<ここまでのポイント>
・2025年12月12日の全面施行で、受注者を守る禁止規定が出そろった
・施行令改正により、勧告対象となる工事の金額の下限(500万円・建築一式1,500万円)が具体化された
2. 2026年1月、遵守ガイドラインが改定された
全面施行を受けて、実務の拠り所となるガイドライン類も更新されています。
(1) 「建設業法令遵守ガイドライン」(元請・下請間、第12版)の改定
●元請負人と下請負人の間のルールを定めたガイドラインが、2026年1月に第12版へ改定された
●全面施行された禁止規定の内容が、ガイドラインの記載にも反映されている
(2) 「発注者・受注者間ガイドライン」(第8版)も同時に改定
●公共・民間を問わず、発注者・受注者間のルールを定めたガイドラインも第8版に改定された
●下請代金支払遅延等防止法・下請中小企業振興法の改正(2026年1月1日施行)にあわせた改定でもある
●出典候補:国土交通省「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン改定等」(URLは執筆時に一次情報を確認して確定)
<ここまでのポイント>
・2026年1月、元請・下請間、発注者・受注者間の両ガイドラインが改定された
・下請代金支払遅延等防止法等の改正ともあわせて実務ルールが更新されている
3. 改定ガイドラインが示す実務上の変化
ガイドラインの改定は、単なる文言の変更ではなく、実際の監督・運用の強化を伴っています。
(1) 原価割れ契約への監督が強化されている
●原価割れ契約に対する国土交通省の監督が強化されており、通報をもとにした立入検査や監督処分も行われている
●匿名での通報も受け付けられており、問題が深刻化する前の相談が想定されている
(2) 発注者が注意すべき点:不当な値引き・無理な短工期の禁止
●受注者が提出した見積もりを発注者が不当に値引くことは不適切とされている
●週休2日を前提とした工期設定が求められ、受注者に無理な短工期を強いることは禁止されている
(3) 「おそれ情報」の通知という仕組み
●資材価格の高騰や資材・労務の供給不足が生じるおそれがあると認めるときは、受注者は契約締結までに発注者へ「おそれ情報」を通知できる
●通知の際は、メディア記事や統計資料など客観性のある根拠情報もあわせて示す必要がある
●実際に資材高騰等が生じた場合、受注者は発注者に価格・工期の変更協議を申し出ることができ、発注者は誠実に応じる努力義務を負う
<ここまでのポイント>
・原価割れ契約への監督が強化され、匿名通報も受け付けられている
・発注者には不当な値引き・無理な短工期の禁止が求められている
・「おそれ情報」の通知により、資材高騰時の価格・工期変更協議を申し出やすくなっている
4. 実務対応として何をすればいいか
全面施行後の運用強化を踏まえると、自社でも備えておきたいポイントがあります。
(1) 見積書の内訳を明示できる体制づくり
●材料費・労務費・法定福利費等の根拠を示せる見積書づくりが、今後さらに重要になる
●自社の実績にもとづく原価管理・自社歩掛の整備が、根拠を示すための土台になる
●関連記事:【設備業の積算】「自社歩掛」とは何か?標準歩掛との違い、始め方 ※8月公開
●関連記事:【設備業 入札対策】入札後の赤字の原因と、自社の備え方 ※9月公開
(2) 「おそれ情報」の根拠となる情報を日頃から整理しておく
●資材価格や労務単価の動向に関するメディア記事・統計資料を、日頃から収集しておくと通知の際に役立つ
●価格転嫁協議を円滑に進めるためにも、根拠情報の整理は経営課題として捉えたい
<ここまでのポイント>
・見積書の内訳を明示できる体制づくりが、今後さらに重要になる
・「おそれ情報」の根拠となる情報を日頃から整理しておくことが、価格転嫁協議の土台になる
まとめ|改正法は「施行して終わり」ではない
●2025年12月の全面施行により、受注者を守る禁止規定が出そろった
●2026年1月には遵守ガイドラインが改定され、監督体制も強化されている
●発注者には不当な値引き・無理な短工期の禁止、受注者には「おそれ情報」の通知という新しい実務が生まれている
●見積書の内訳明示・根拠情報の整理は、今後の経営課題として備えておきたい
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