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 止まらない資材価格高騰が設備業界の経営を圧迫しています。改正建設業法では適正な価格転嫁が求められる一方、従来の資材調達や原価管理だけでは対応が難しくなっています。工事原価管理システムの活用、仕入先の見直し、EDI導入など具体的な対策を解説します。

目次
-止まらない資材価格高騰と調達環境の変化
-改正建設業法が求める適正な価格転嫁
-【対策】工事原価管理システムによる価格変動対応力の強化
-【対策】仕入先の見直しとリスク分散
・仕入先の多様化と
・調達方法の工夫と在庫管理
-【対策】EDI活用による調達業務のデジタル変革
・従来の調達業務の課題
・EDI(電子データ交換)導入の効果
-資材調達を見直して価格高騰時代を乗り切る

止まらない資材価格高騰と調達環境の変化

 鋼材、銅線、配管材料などの価格は、原材料費の上昇や円安、物流コストの増加により、数年で大幅に上昇し、建設業界に深刻な影響を及ぼしています。

 残念ながら、この価格高騰は終わりが見えない状況です。見積時点と実際の発注時点で資材価格が変動し、当初想定していた利益を確保できなくなるケースが増加しています。

 こうした状況下で、原価上昇への危機感が設備業界全体で高まっています。一方、中小規模の設備業者はツーカーで話ができる特定の仕入先から調達する傾向にあり、価格交渉力が弱く、価格高騰の影響をそのまま受けてしまいがちます。

 利益の確保は企業の存続に関わる重大な問題であり、抜本的な対策が求められています。

参考記事:建設業の物価高倒産が急増!建設物価を活用して赤字受注を回避する方法
参考記事:設備業の収益性向上!利益率アップのカギとなる積算見積と原価管理

<ここまでのポイント>
・資材価格はここ数年で大幅に上昇し、終わりが見えない
・見積時と発注時の価格差が利益を圧迫している
・特定仕入先に依存すると価格交渉が難しくなる

改正建設業法が求める適正な価格転嫁

 改正建設業法では、資材価格高騰に対応した契約変更ルールが明確化されました。資材価格などに「著しい変動」が生じた場合、元請・下請の間で適正な協議を行い、契約金額を見直すことが求められています。元請業者は下請業者からの価格転嫁の申し出に対し、誠実に協議することが努力義務となっています。これにより、コスト増加を一方的に下請業者が負担する状況を防ぐことが期待されています。

 価格転嫁の協議では、資材価格の変動幅や工事原価への影響を具体的なデータで示す必要があります。建設物価データや工事原価管理システムを活用すると効率的に数値根拠を示せるようになります。客観的な根拠をもって交渉することで、適正な価格転嫁が実現しやすくなります。

 デジタル化によって、書面による契約変更の記録保存も容易になります。契約変更の内容、協議の経過、変更理由などを文書化し保存することで、取引の透明性が確保され、トラブルを防ぐことができます。

参考記事:【改正建設業法】資材高騰の労務費へのしわ寄せ防止の対策
参考記事:建設業法改正、対応できないとどうなる?今すぐやるべき対策

【対策】工事原価管理システムによる価格変動対応力の強化

紙の台帳やExcelの原価管理の限界

 設備業者の中には紙の台帳やFAXによる受発注を行っている会社もあります。資材価格が日々変動する中、手作業での更新に時間がかかり、最新の原価情報を把握することが困難です。複数の工事を並行して管理する場合、情報の整合性を保つことも難しくなります。また、現場で発生した資材の追加発注や仕様変更が、バックオフィスの原価管理にすぐ反映されないため、リアルタイムでの採算把握ができません。この情報ギャップが、利益率低下の発見を遅らせる原因となっています。

 状況の把握が追いつかず、対応が後手に回ってしまい、価格転嫁のチャンスを逃す可能性があります。

工事原価管理システムで期待できる効果

 工事原価管理システムの導入により、これらの課題を解決できます。

効果①:リアルタイムに原価管理できる
システム上で発注情報や資材価格が即座に更新できるため、常に最新の原価状況を把握でき、価格変動に迅速に対応できるようになります。

効果②:原価計算工数の削減
手作業での集計や計算が不要になり、担当者の業務負担が大幅に軽減されます。その分、戦略的な業務に注力できます。

効果③:見積精度の向上
過去の物件の工事原価を分析することで、より正確な見積が可能になります。価格交渉に必要な客観的なデータを確保できるため、元請との価格転嫁交渉も有利に進められます。

効果④:迅速な意思決定
システムを介して経営層、現場、バックオフィスが同じ情報を参照でき、組織全体での連携が強化されます。これにより利益率低下の早期発見と迅速な経営判断が可能になります。

参考:[二の丸EXv2]設備業向け工事原価管理システム

<ここまでのポイント>
・契約変更ルールの明確化で価格転嫁が可能に
・デジタル化で客観的データの根拠提示を容易になる
・契約変更記録の保存も実現できる

【対策】仕入先の見直しとリスク分散

仕入先の多様化

 資材価格高騰に対応するために仕入先を見直してみましょう。特定の仕入先に依存していると価格交渉力が弱まり、供給トラブルが発生した場合は工事の遅延リスクもあります。同じ資材を複数の仕入先から調達できる体制を構築することで価格比較が習慣化し、交渉力向上とリスク分散につながります。

 しかし、無計画に仕入先を増やしてしまうと混乱が生じる場合があります。供給の安定性、価格の妥当性、対応の柔軟性、発注の利便性などをチェックし、単に価格が安いだけでなく、長期的に安定した取引ができる仕入先を見極めて、無理なく管理できる範囲で仕入先を確保することが重要です。

調達方法の工夫と在庫管理

 長期契約や大量購入によるボリュームディスカウントも効果的です。使用頻度の高い資材はやや多めに在庫を持つことも一案ですが、過剰在庫は資金繰りを圧迫するため、適切な在庫管理と需要予測が不可欠です。同業他社との共同調達は自社だけでは使いきれない量を購入できますので、仕入先にもメリットが出せます。

 工事原価管理システム「二の丸EXv2」の在庫管理を活用すると、最適な在庫水準を維持することができます。

<ここまでのポイント>
・手作業では価格変動への対応が後手に回る
・リアルタイムの工事原価管理で迅速な判断ができるようになる
・見積精度向上と価格交渉の根拠提示を実現

【対策】EDI活用による調達業務のデジタル変革

 EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)とは、企業間で受発注データや納品データなどをネットワーク経由で電子的にやり取りする仕組みです。大手ゼネコンや設備工事会社でEDI導入が進み、導入を求められる会社もあるのではないでしょうか。

 しかし、中小企業では初期投資や運用コスト、ITリテラシーが課題となり、なかなか積極的になれないようです。中小企業でも導入しやすい低コストのEDIシステムも登場しており、導入メリットが拡大しています。調達業務の課題とEDIの導入効果を解説します。

従来の調達業務の課題

 多くの中小設備業者では、以下のような課題が顕在化しています。

課題①:FAX・電話による発注の非効率性
発注書の作成、FAX送信、電話での確認といった一連の作業に多大な時間がかかり、ミスも発生しやすくなっています。

課題②:手作業による入力ミス・納期遅れ
FAXで受け取った発注情報を手入力でシステムに転記する際、入力ミスが発生し、誤発注や納期遅れにつながるケースがあります。

課題③:価格・在庫情報の把握困難
仕入先ごとに個別に問い合わせなければ最新の価格や在庫状況がわからず、最適な調達判断が難しくなっています。

参考記事:建設資材の高騰にどう対処する?DXによる収益アップの取組み

EDI導入の効果

 EDIを導入することで調達業務のデジタル化が実現し、以下のような効果が期待できます。

効果①:発注業務の自動化・効率化
従来の発注プロセスが大幅に簡素化され、紙ベース業務から脱却できます。手作業での入力が不要になるため、誤発注や数量ミスが大幅に減少し、処理時間を削減できます。

効果②:リアルタイム情報共有の実現
発注状況や納期情報を関係者が同時に把握できます。モバイル対応のEDIでは現場から直接発注や在庫確認ができ、業務スピードが向上します。

効果③:複数サプライヤーからの一括見積もり取得
複数の取引情報を一元管理し、価格や納期を容易に比較検討できます。

効果④:価格比較・最適仕入先選定の自動化
資材価格が頻繁に変動しても最適な仕入先を選定でき、価格比較・仕入先選定の自動化も行えるため、調達担当者の判断業務が効率化されます。

効果⑤:調達実績データの蓄積と分析活用
調達実績のデータ活用で、需要予測や購買計画の立案が容易になります。法令で求められる書面の記録保存への対応も可能になります。

<ここまでのポイント>
・複数仕入先の確保で価格交渉がしやすくなる
・コスト削減には長期契約や共同調達も有効
・適切な在庫管理と需要予測が重要

資材調達を見直して価格高騰時代を乗り切る

 資材価格高騰が続く時代、利益を確保するためには、デジタル活用が効果的です。
工事原価管理システムで蓄積したデータを分析し、客観的な根拠に基づいた価格交渉や経営判断を行うこと、EDI活用による調達業務のデジタル変革、仕入先の複数化や契約方式の工夫によるリスク分散が重要です。

 資材価格高騰は避けられませんが、適切な対策を講じることで競合他社との差別化要因になります。改正建設業法に対応した適正な価格転嫁、リアルタイムな原価管理体制の構築、調達業務の効率化により、資材価格高騰の影響を最小限に抑え、安定した利益確保が可能になります。

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