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 2025年12月、改正建設業法が完全施行を迎えました。標準労務費の導入、建設Gメンによる監督強化、ICT活用による専任規制の緩和などによって、業界の構造的変革は本格的に進行するでしょう。
 法改正への対応を一過性のコストで終わらせず、競争力強化の機会とするための具体的な戦略とDXロードマップを提案します。法令遵守と収益性向上を両立させ、持続可能な経営基盤を構築するためのヒントが満載です。

目次
-改正建設業法対応「義務」から競争力強化へ
 ・改正法が求める「透明性の高い経営」とは
 ・改正法対応の遅れで直面する二つのリスク(罰則と受注減)
-【おさらい】経営者が押さえるべき改正法「全体」の重要ポイント
 ・ポイント①:労務費の標準化と積算への影響
 ・ポイント②:工期・工費の適正化と担い手確保
 ・ポイント③:契約明確化(見積時の内訳明示)義務化の徹底
-法令遵守を徹底させる「監督・規制強化策」の掘り下げ
 ・建設Gメンによる監督強化と通報制度
 ・法令違反が招く指名停止・営業停止のリスク
-競争力強化に繋がる「優遇・促進策」の活用戦略
 ・(発注者向け)労務費基準の策定・勧告制度による環境整備
 ・(受注者向け)公共工事の入札加算や許可更新の優遇制度
 ・優良企業の公表制度を利用した企業イメージ向上
-【DXロードマップ】法対応と利益確保の両立を考える
 ・ステップ1:工事実績データの活用による適切な工期算定の確立
 ・ステップ2:「自社歩掛」のデジタル化による積算基準の標準化と技術継承
 ・ステップ3:業務全体の効率化と透明性向上
-一過性で終わらせない法対応!デジタル投資のメリット

改正建設業法対応「義務」から「競争力」強化へ

改正法が求める「透明性の高い経営」とは

 ご存じの通り、建設業界は深刻な担い手不足に直面しています。改正建設業法が求めるのは、働き手に適正な賃金を行き渡らせる「透明性の高い経営」です。
 これまで不透明な取引慣行の中で、労務費が価格交渉の調整弁となっていました。改正法により、内訳明示・標準労務費参照・契約書への変更方法明記・リスク情報の事前通知が求められます。不当な価格競争を排除し、「労務費削減による安さ」ではなく「透明性と信頼性」が重視される時代が到来しています。

参考記事:【12月施行!改正法「標準労務費」の概要】法対応で利益を守る実務対策

改正法対応の遅れで直面する二つのリスク(罰則と受注減)

 改正法への違反は、事業や経営への深刻なリスクをもたらします。大幅増員された建設Gメンが匿名の通報制度や年間3万件の書面調査で対応状況を把握します。 違反に対する直接的罰則が第一のリスクです。著しく低い労務費での見積には指導・監督・勧告・公表、より悪質な場合は営業停止処分が課されます。さらに、罰則による社会的評価の低下と市場淘汰のリスクがあります。具体的には、入札参加での不利、採用難や協力会社離れなどが起こりえます。一方、適切な法対応は発注者の信頼、優良な人材・協力会社の確保への好影響を期待できます。

<ここまでのポイント>
・改正法への対応遅れは、罰則や市場淘汰のリスクとなる。
・適切な法令遵守は社会的な評価と経営基盤の強化につながる。

【おさらい】経営者が押さえるべき改正法「全体」の重要ポイント

ポイント①:標準労務費の「実務運用」と現場での使い方

 国が定める標準労務費とずれがあっても問題がない場合もあります。国交省は、適切な根拠説明があれば容認されるケースを明示しています。根拠説明の手順例を紹介します。

小ロット工事・狭隘現場・複雑な改修工事高めの見積でも可
ICT活用・独自工法低めの見積でも可

<標準労務費の根拠説明の手順例>
・実績に基づく「自社歩掛」を作成する。
・標準歩掛との差異理由を文書化する。
・施工条件ごとの補正係数を設定する。
 ※上記の説明資料をテンプレート化しておくと、効率よく提示できます。

関連記事:改正建設業法「労務費の標準」義務化!DXで法対応と経営力底上げ

ポイント②:工期・工費の適正化と担い手確保

 2024年4月から時間外労働の上限規制(年960時間)が適用され、改正法では受注者による「著しく短い工期」での契約も禁止されました。適正工期設定は、技能者の働き方改革と処遇改善に直結します。

 過去実績から工種別・規模別の標準工期をデータベース化しておくと、発注者の希望工期との乖離が生じた際に協議の申し出がしやすくなります。また、監理技術者の専任規制が緩和され、請負代金1億円未満(建築工事は2億円)、移動2時間以内など一定条件下での2現場兼務が可能となりました。

関連記事:設備業の職人高齢化対策 デジタル活用で担い手不足を解決する

ポイント③:契約明確化(見積時の内訳明示)義務化の徹底

 改正法には、契約内容を明確化するための規定があります(2024年12月13日施行)。下表に基づいて受注者はリスク情報(おそれ情報)を契約前に通知し、そのリスクが顕在化した時に変更協議を申し出られます。発注者は誠実に協議に応じる義務を負います。

見積書努力義務材料費・労務費・法定福利費等の内訳を明示する
歩掛(労務費)・数量・単価・金額等を明記
契約書義務資材価格変動時の変更方法を具体的に記載
例)資材価格○%以上変動時は協議で請負代金見直し など

ここまでのポイント>
•標準労務費は施工条件に応じた増減が認められ、説明責任が重要
•工期適正化と契約明確化で適切な価格転嫁を実現、ICT活用で専任規制緩和

関連記事:資材価格高騰の時代を乗り切る~資材調達と工事原価管理による課題解決

法令遵守を徹底させる「監督・規制強化策」の掘り下げ

建設Gメンによる監督強化と通報制度

 建設Gメンは2024年度に72人から135人へと倍増されました。契約書の記載内容と実際の取引状況を照合して適正な取引が行われているかを確認し、違反を認めた場合は建設業許可部局による指導監督や勧告・公表措置がとられます。

<建設Gメンの主な活動内容>
・モニタリング調査(契約書・見積書・賃金台帳確認)
・駆け込みホットライン(匿名通報可)
・書面調査の拡大(年間約3万業者)
・労基署との合同調査

法令違反が招く指名停止・営業停止のリスク

 法令違反には段階的な罰則が設けられており、段階が進むほど影響は深刻化します。特に企業名公表以降は処分期間終了後にも影響するため、法令遵守は事業継続の前提条件と言えます。

【第1段階】指導・勧告
 改善計画の提出を求められます。この段階では企業名公表はされませんが、記録は残り、再発時により重い処分となります。業務改善が急務となり、さまざまな負担が生じます。

【第2段階】企業名公表
 国土交通省のWebサイトで社名・違反内容が公表されます。社名検索すると違反事実が上位表示されるなどインターネット上に半永久的に残り、長期的な信用損失となります。公共工事入札における不利な評価、民間発注者に取引を控えられるなどの営業上の不利に加えて、採用活動への悪影響も想定されます。

【第3段階】監督処分(指示・営業停止)
 営業停止期間中(通常1~6ヶ月)は受注ができなくなります。既存工事の継続にも影響が生じます。技能者の流出、協力会社の取引停止、融資引き上げなど、連鎖的な悪影響が発生します。信用回復には長期間を要し、処分期間終了後も受注量が戻らないケースが多く見られます。

【第4段階】許可取消・入札参加停止
 建設業許可が取り消されると、実質的に事業継続が困難になります。許可の再取得には数年を要し、その間の受注はゼロになり、廃業・倒産に至るリスクとなります。

<ここまでのポイント>
•建設Gメンは135人体制で調査強化、通報制度や労基署との連携も
•違反は指導→公表→営業停止と段階的に厳格化

競争力強化につながる「優遇・促進策」の活用戦略

(発注者向け)労務費基準の策定・勧告制度による環境整備

 改正法では、中央建設業審議会が「労務費の基準」を作成・勧告できる権限が新設されました。この基準により、適正な労務費水準が浸透し、公正な競争環境が整備されます。発注者も客観的基準で見積の妥当性を判断でき、不当に低い見積を排除できます。受注者は、国が定める基準に準拠することで不当な値下げ交渉を回避できます。

関連記事:【改正建設業法】資材高騰の労務費へのしわ寄せ防止の対策

(受注者向け)公共工事の入札加点や許可更新の優遇制度

 法令遵守や労働環境改善に取り組む企業は、公共工事の入札で加点評価されます。経営事項審査(経審)では、技能者を大切にする企業の自主宣言、建設キャリアアップシステム(CCUS)活用状況、若年技術者の雇用実績などが重視されます。今後、ICT活用による生産性向上や適正労務費確保の契約実績が、総合評価方式の加点要素となる可能性もあります。
また、建設業許可申請でも法令遵守状況が厳格に審査され、法令違反の実績があれば、更新が困難になります。

関連記事:【入札対策】公共工事 入札の勝率を高める方法と建設業法改正の影響

優良企業の公表制度を利用した企業イメージ向上

 国は労働者の処遇確保に係る取り組み状況を調査・公表する権限を有し、優良企業を積極的に公表します。公表企業は企業ブランディングに活用できます。地域の建設業協会や商工会議所の表彰制度に応募する、自社Webサイトや求人広告など発信するなどで、イメージアップや採用強化を期待できます。

<ここまでのポイント>
•標準労務費は発注者との交渉で適正価格を実現する根拠となる
•法対応企業は入札で加点評価、優良企業公表制度でブランド向上

【DXロードマップ】法対応と利益確保の両立を考える

 法令遵守を最低限クリアすべき基準と位置づけ、その先の「競争優位の確立」をめざしたロードマップを解説します。デジタル化による業務変革で、収益性向上・技術継承・人材確保をめざしましょう。

ステップ1:工事実績データの活用による適切な工期算定の確立

 第一歩となるのは積算見積、工事管理、原価管理のデジタル化です。以下のような流れで工事実績データを体系的に蓄積・分析し、適切な工期算定や積算基準を確立できます。見積段階での発注者への根拠説明や建設Gメン調査など、対外的な説明にも活用できます。

①工事の基本情報(工種、規模、場所、工期、実工数など)をデータベース化する。

②蓄積データを分析し、自社基準を設定する。
 例)空調設備工事の標準工期:○○日、電気設備の配管工事:1日あたり○○mなど

③自社基準に基づいて、工期算定や積算を行う。

ステップ2:「自社歩掛」のデジタル化による積算基準の標準化と技術継承

 次のステップは蓄積したデータの活用です。中小設備業者の強みは、長年培った独自のノウハウや効率的な施工方法にあります。実績データの分析によってベテラン技術者が持つ「勘と経験」を数値化し、施工条件ごとの補正係数として記録することで「自社歩掛」を作成できます。

活用例:
・自社歩掛と積算システム
 見積の妥当性の根拠となり、若手でも精度の高い見積を作成できるようになります。
・実行予算と工事原価管理システム
 受注後の原価管理が容易になり、リアルタイムに利益を把握できます。

関連記事:実行予算とは、組み方と活用方法、工事管理で注意すべきポイント

ステップ3:業務全体の効率化と透明性向上

 最終段階は、業務全体のデジタル化です。デジタル化により、契約内容・変更履歴・支払状況が記録されます。施工ノウハウの蓄積、取引先・協力会社との関係強化などに役立ち、建設Gメンの調査が入った際には証拠資料にもなります。

活用例:
・建設キャリアアップシステム(CCUS)
技能者の資格情報や就労履歴を一元管理でき、書類作成の手間が大幅に削減されます。
・クラウド型図面共有システムや工程管理アプリ
元請・下請間の情報共有をリアルタイムで行え、現場の進捗状況を可視化できます。手戻りや手待ちが減少し、工期短縮と原価低減が実現します。

関連記事:建設キャリアアップシステム原則化へ?未登録のデメリットを解説

<ここまでのポイント>
•工事実績データの蓄積・分析が適正工期の根拠となる
•自社歩掛と業務全体のデジタル化で競争優位を確立

一過性で終わらせない法対応!デジタル投資のメリット

 改正法対応は待ったなしです。一過性のコストと捉えるか、長期的な競争力強化の投資と捉えるかで会社の未来は変わります。
デジタル投資は、見積精度向上と収益改善、法令遵守とリスク低減、技術継承とノウハウの資産化、生産性向上と働き方改革、企業ブランド向上と人材獲得という5つの価値をもたらします。これらの相乗効果で競争力が高まります。

 法令遵守を徹底し、業務効率化と透明性を高めることが持続的な成長の基盤になります。一過性の法対応で終わらせるのではなく、中長期の視点でDXを着実に実行していくことが、これからの時代を生き抜く鍵となるでしょう。

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