建設業の倒産が増え続けています。2025年は2,000件を超え、2026年に入ってからも前年を上回るペースで推移しています。最新データをもとに、倒産急増の背景と倒産の波から逃れるために今とるべき対策を解説します。
目次
1. 建設業の倒産、4年でほぼ倍増
(1) 2025年の建設業倒産は2,014件、2021年からほぼ倍増
(2) 2026年に入ってからも増加傾向が続く
2. 設備工事業にも増加の兆し
(1) 2025年の設備工事業の倒産は420件を超えた
(2) 直近の月次でも、急増を示す数字が出ている
3. 倒産急増の主因は「物価高」への対応の遅れ
(1) 「物価高倒産」は建設業で最多、集計開始以来最多ペース
(2) 新設住宅着工の減少、建築確認申請の厳格化も逆風に
4. データが示す教訓:原価を正確に把握し、価格転嫁できる体質へ
(1) 資材・労務費などの上昇分を価格に転嫁できるかどうかが、生死を分ける
(2) 改正建設業法が、価格転嫁を後押ししている
(3) 自社歩掛と、根拠を示せる見積書づくりが、その土台になる
まとめ|倒産の波に飲まれないために、今できること
1. 建設業の倒産、4年でほぼ倍増
建設業の倒産件数は、2021年を底に増え続けています。まずは最新のデータからその実態を確認します。
(1) 2025年の建設業倒産は2,014件、2021年からほぼ倍増
東京商工リサーチの調査によると、建設業の倒産は2021年に1,065件と2000年以降で最少となりましたが、その後は増加に転じ、2025年は前年比4.6%増の2,014件と、4年でほぼ倍増しています。倒産数増加の背景には、人件費の急騰や建材価格の上昇といったコスト増の要因がありながら、請負単価への価格転嫁が難航している実態があるとみられています。
出典:東京商工リサーチ「止まらない建設業の倒産、職別工事が総合工事を抜く」
出典:帝国データバンク「『建設業』の倒産動向(2025年)」
(2) 2026年に入ってからも増加傾向が続く
さらに、2026年に入ってからも増加傾向が続いています。東京商工リサーチによると、2026年上半期(1〜6月)の建設業倒産は1,026件で、前年同期比5.8%増となりました。
上半期としては5年連続で前年同期を上回っています。直近の2026年7月も、帝国データバンクの集計で建設業の倒産は207件(前年同月比14.4%増)となりました。
また、倒産に休廃業・解散(廃業)を加えた「撤退」の件数は、2026年上半期で5,937件に達しました。リーマン・ショック直後の2009年(5,811件)を上回り、上半期としては過去最多です(帝国データバンク)。
出典:東京商工リサーチ「2026年上半期(1-6月)の全国企業倒産5,346件」
出典:帝国データバンク「『建設業』の倒産・休廃業解散動向(2026年上半期)」
<ここまでのポイント>
・2025年の建設業倒産は2,014件と、2021年(1,065件)からほぼ倍増。
・2026年も増加傾向、上半期は1,026件(前年同期比5.8%増)。
関連記事:急増する建設業の倒産の理由、倒産回避のためにとるべき対策(2023年5月)
2. 設備工事業にも増加の兆し
建設業全体が増加傾向にあるなか、設備工事業にも見過ごせない動きが出ています。ここでは、2025年の年間の倒産件数と、直近の2026年7月の月次データの2つから、設備工事業の動きを整理します。
(1) 2025年の設備工事業の倒産は420件を超えた
東京商工リサーチの調査によると、2025年の設備工事業の倒産件数は420件を超え、2014年(429件)以来の水準となりました。同じ調査では、大工・塗装・内装などの「職別工事業」(設備工事業を除く)の倒産が814件となり、2000年以降で初めて「総合工事業」(774件)を上回っています。東京商工リサーチは、下請色の強い職別工事や設備工事の割合が高まっていると分析しています。小規模な下請専門工事業者は価格交渉力が弱く、厳しい経営から抜け出すことが難しい実情があるとしています。
出典:京商工リサーチ「止まらない建設業の倒産、職別工事が総合工事を抜く」
(2) 直近の月次でも、急増を示す数字が出ている
2026年7月の建設業の倒産207件のうち、電気工事・管工事などの「設備工事」は45件で、前年同月(31件)から約45%増加しています。建設業全体の増加率(14.4%)を大きく上回る伸びです。建設業全体の背景として、資材高や人件費の上昇、人手不足が挙げられています。年単位でも、月単位でも、設備工事業の倒産は増加しています。
<ここまでのポイント>
・設備工事業(電気・管工事等)でも2026年7月は前年比45%増という数字が出ている
・小規模な専門工事業者は価格交渉力が弱く、厳しい経営から抜け出すことが難しい
3. 倒産急増の主因は「物価高」への対応の遅れ
あらためて、倒産が増えている主因について、データから考察してみましょう。
(1) 「物価高倒産」は建設業で最多、集計開始以来最多ペース
帝国データバンクが集計する「物価高倒産」(資材・原材料価格の高騰が主因とみられる倒産)は、2026年上半期の建設業で151件発生し、全業種の中で最多でした。
2026年4月単月でも建設業の物価高倒産は33件で、同月中の最多件数となっており、2018年の集計開始以降、最多ペースが続いています。要因別では「原材料(価格の高騰)」が最も多く、「人件費」「エネルギーコスト」が続きます。鉄骨や木材、住設機器の価格高騰を売価に反映できないまま、事業継続を断念するケースが目立っています。
出典:帝国データバンク「物価高倒産の動向(2026年上半期)」
出典:帝国データバンク「『物価高倒産』の動向(2026年4月)」
(2) 新設住宅着工の減少、建築確認申請の厳格化も逆風に
この結果に、仕事そのものの増減は影響しているのでしょうか。着工件数の視点で考えてみます。
国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年計)」によると、2025年の新設住宅着工戸数は74万667戸(前年比6.5%減)で、3年連続の減少となりました。帝国データバンクによると、2025年4月からの建築基準法の改正(4号特例の縮小)で確認申請が厳格化され、設計・申請に時間がかかり工期が延びたことも、倒産増加の背景にあるとされています。
出典:国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年計)について」
出典:国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」
出典:帝国データバンク「『建設業』の倒産・休廃業解散動向(2026年上半期)」
<ここまでのポイント>
・「物価高倒産」は建設業で最多水準、資材・原材料価格の高騰が主な要因
・新設住宅着工の減少や建築確認申請の厳格化も、業界全体の逆風になっている
4. データが示す教訓:原価を正確に把握し、価格転嫁できる体質へ
ここまで見てきたデータでは「資材・労務費などの上昇分を価格に転嫁できるかどうか」が、生き残りを左右しているという構図を示しています。
(1) 資材・労務費などの上昇分を価格に転嫁できるかどうかが、生死を分ける
物価高倒産の多くは、資材・労務費などの上昇分を価格に反映できないまま、原価割れの状態で工事を続けてしまうことが背景にあると考えられます。逆に言えば、コスト上昇の影響を正確に把握し、早めに価格転嫁の交渉ができる会社は、この波を乗り越えやすいといえます。
(2) 改正建設業法が、価格転嫁を後押ししている
2025年12月に全面施行された改正建設業法は、まさにこの価格転嫁を後押しする仕組みとして考えられた施策です。改正建設業法では、建設工事の見積書に記載すべき事項が明記され、材料費等(材料費・労務費など)について通常必要と認められる額を著しく下回る見積りや、見積りの変更依頼を行うことが禁止されました。
これにより、根拠を示した見積書を提出すれば、発注者側がそれを不当に値引くことが難しくなる仕組みが整いつつあります。さらに、資材価格の高騰や資材・労務の供給不足が生じるおそれがあると判断した場合、受注者は契約締結までに発注者へ「おそれ情報」を通知しなければならないとする規定も設けられました。あらかじめ通知しておくことで、実際に資材高騰等が生じた際の価格や工期の変更協議を進めやすくなり、発注者側もこの協議に誠実に応じる努力義務があることが明記されています。
価格転嫁の交渉は言い出しづらいものですが、法律によって受注者側の正当な権利として明確に位置づけられています。もっとも、制度が整ったからといって、実態がすぐに追いつくわけではありません。
帝国データバンクが2026年7月に実施した価格転嫁の実態調査では、価格転嫁率は39.9%にとどまり、前回調査(2026年2月、42.1%)から低下しています。法改正が後押しする仕組みが整っても、実際の転嫁が十分に進んでいるとは言えない状況です。
出典:帝国データバンク「価格転嫁に関する実態調査(2026年7月)」
関連記事:【設備業】改正建設業法、全面施行後のガイドライン改定とは
(3) 自社歩掛と、根拠を示せる見積書づくりが、その土台になる
だからこそ、法律が用意した仕組みを実際に使いこなせるかどうかで、会社ごとの差が生まれやすくなっているといえます。自社の実績にもとづく自社歩掛は、正確な原価把握のための土台になります。自社歩掛にもとづく根拠のある見積書と、改正建設業法が用意した仕組みを組み合わせることで、価格転嫁の交渉に向かう準備ができるのです。
関連記事:【設備業の積算】「自社歩掛」とは何か?標準歩掛との違い、始め方
<ここまでのポイント>
・資材・労務費などの上昇分を価格に転嫁できるかどうかが、倒産を防げるかどうかを左右する
・改正建設業法の見積書記載義務・おそれ情報の通知制度は、価格転嫁を後押しする仕組み
・自社歩掛による原価把握と根拠を示せる見積書づくりが、生き残りの土台になる
まとめ|倒産の波に飲まれないために、今できること
建設業の倒産は増加が続いていますが、資材・労務費などの上昇分を価格に転嫁できるかどうかが、生き残りの分かれ目になっています。こうじやさんシリーズなら、工事実績データにもとづく原価管理と、根拠を示せる見積書づくりを支援します。
<本記事のポイント>
Q. 建設業の倒産は、今どのくらい増えているのか?
A. 2025年の建設業倒産は2,014件で2021年からほぼ倍増、2026年も増加傾向が続く。設備工事業(電気・管工事等)にも増加の兆し。
Q. なぜ倒産がこれほど増えているのか?
A. 主因は資材・労務費などの上昇分を価格に転嫁できないこと。「物価高倒産」は建設業で最多水準。
Q. 改正建設業法は、この状況にどう関わっているのか?
A. 見積書の記載義務やおそれ情報の通知制度を通じて、価格転嫁を後押しする仕組みだが、実際の価格転嫁率は低い状態。
Q. 倒産の波に飲まれないために、何をすればいいのか?
A. 自社歩掛による原価把握と根拠を示せる見積書づくりが、生き残りの土台になる。
