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 改正建設業法は2024年から段階的に施行され、2025年12月まで待ったなしの対応が求められます。建設業法改正に対応できない場合、建設業許可の取消しや指名停止などの深刻なリスクが発生する可能性があります。

 改正法への対応は、多くの中小建設業者にとってハードルが高い課題になっているようです。建設業法改正の主要ポイントから対応できない場合のリスク、人手が少ない中小企業でも無理なく対策できる方法などについて解説します。

目次
-建設業法改正の主要ポイントと施行時期
・施行時期ごとに整理する改正内容
・改正による設備業者への影響
-改正建設業法への対応が遅れたらどうなる?
-限られた時間と人手で効率的に対応する方法
・デジタル活用による効率化
・業務フロー見直しと期待できる効果
-改正建設業法対策の事例
・積算見積の標準化
・実行予算による原価管理
-法改正を経営体質強化の機会に変える

建設業法改正の主要ポイントと施行時期

 改正建設業法については何度か取り上げていますが、対応すべき範囲を把握するために、あらためて改正の主要ポイントを施行時期ごとにおさらいしていきます。

施行時期ごとに整理する改正内容

 建設業法改正は2024年6月14日に公布され、2025年12月までに大きく言うと3段階に分けて、施行されることになっています。施行時期ごとに改正内容を整理してみます。法改正に対応すべき時期を逃すごとにリスクは高まっていきます。

第1段階:2024年9月1日施行
・施工管理体制の強化:施工体制台帳作成義務の変更による業務負担の軽減と記載内容の詳細化。
・労務費基準の中建審作成権限
・違反への監督処分強化:重大違反への営業停止・許可取消の措置を適用。違反事例の公表制度導入。

第2段階:2024年12月13日施行
・技術者専任義務の合理化:一定規模以下の工事の監理技術者の兼任により現場管理の柔軟性を向上。
・価格転嫁対策強化:資材価格の変動に伴う請負代金の変更方法を契約書への明記が義務化。
・現場管理の効率化:電子契約の普及やデジタル施工管理の推進により、業務の効率化を促進。

第3段階:2025年中施行予定
・労務費基準の明確化:著しい低い労務費による見積の作成・要求等の禁止。
・適正な工期設定の義務化:過度な短工期契約を禁止し、工期変更の協議制度を導入。
・下請契約の透明性向上:発注者は適正な契約条件を提示する義務を負い、契約内容を明確化。

改正による設備業者への影響

 公共工事の入札で改正法への対応状況が評価項目に含まれるのはもちろんですが、民間工事でも元請会社から発注を見送られるようになる可能性があります。業務優先で対応を遅らせてしまうと、結果的に受注機会の減少につながりかねません。改正法対策に関して、やらないで済ませる選択肢はないと考えるべきです。改正法対策で発生する影響を社内の業務負荷と発注者との関係という視点でまとめました。

<改正法対策による業務負荷の影響>
・労務費の適正化により、従来の価格体系の見直しが必要になる。
・見積の標準書式が変わり、歩掛記載対応などの対応が求められる。
・施工体制台帳の詳細化による事務作業の負担が増加する。

<元請会社との契約関係に影響するポイント>
・下請契約の透明性向上:契約内容の明確化とダンピング防止
・見積および契約内容の見直し:労務費の適正化や資材価格変動への対応など
・施工体制の適正化:監理技術者の専任義務の合理化と元請業者の管理責任の見直し
・適正な工期設定:短工期契約の禁止と工期変更の協議への対応

<ここまでのポイント>
・段階的に施行される法改正に対応しないことでリスクは高まっていく。
・改正法により下請業者の負担は軽減されるが、事務作業や管理コストは増加する。

建設業法改正への対応が遅れたらどうなる?

 改正法施行後、適切な対応ができていないとペナルティが発生する可能性があります。起こりうるリスクの例を紹介します。

・建設業許可の取消し
もっとも重いペナルティでは、営業停止処分や建設業許可の取り消しといった監督処分を受ける可能性があります。建設業許可を失うと、500万円以上の工事を請け負うことができなくなります。

・指名停止処分
建設業許可の取消しについで厳しい措置と言えるのは、公共工事の入札参加資格を一定期間、停止する指名停止処分です。公共工事の比率が高い事業者にとって大きなダメージになります。

・受注機会の喪失
改正法には、元請業者の管理責任を強化する内容も盛りこまれています。建設業法改正に対応できない下請け会社が問題を起こした場合、発注者として責任の一端を問われる可能性があります。そのため、「コンプライアンスリスク」と判断され、発注を見送られる可能性があります。

・損害賠償
法改正対応への遅れたことで、工事の遅延や品質問題などが発生した場合、発注者から損害賠償を求められるリスクがあります。特に工期設定については、従来の感覚的な工期設定がトラブルの原因になる可能性があります。

・金融機関からの信用を失う
建設業法違反により処分を受けた場合、会社としての信用が失墜します。その結果、金融機関の評価がさがり、融資の継続が難しくなるケースも想定されます。

<ここまでのポイント>
・改正法に対応しないと営業停止などの重い処分を科される場合もある。
・売上の大幅減少や資金繰りの悪化などの影響も起こりうるので要注意。

限られた時間と人手で効率的に対応する方法

 バックオフィス系の社員が少ない中小規模の設備業者では、改正法対策に充てられる人手が少なく、対応が遅れる理由のひとつになっています。業務と両立させながら、無理なく対策を進めるポイントを紹介します。

デジタル活用による効率化

 中小規模では、業務管理を紙の台帳管理や集計作業に依存している会社もあります。手間や時間がかかるだけでなく、ミスも多くなります。施工体制台帳のデジタル化や工事原価を管理するシステムの導入によって、労務費の適正化や資材価格変動への対応など、改正法への対応が容易になります。

参考記事:【建設業法改正】改正ポイントとデジタル活用による対策を徹底解説

業務フロー見直しと期待できる効果

 今回の法改正には、建設業界の商習慣や働き方を根本から変革する内容が盛りこまれています。改正法に対応するためには、社内ルールや業務フローなどの見直しがマストになります。主な見直しポイントを解説します。

(1)資材価格変動の転嫁
 ・資材価格の変動を把握し、必要に応じて価格転嫁できるよう管理する。
 ・発注者との間で請負代金の変更について協議するルールを取り決める。
 ・資材価格変動リスクの「おそれ情報」を提供するしくみをつくる。
<期待できる効果>
  ・資材価格の変動を適切かつスムーズに価格転嫁できる。
  ・価格転嫁により赤字を回避できる。

(2)労務費の適正化
 ・最新の標準労務費の基準を確認し、見積もりに適正な労務費を反映する。
 ・労務費の適正な支払いを確保するための社内ルールを整備する。
 ・適正な賃金支払いを証明できるよう、労務管理及び労務費の記録を徹底する。
<期待できる効果>
  ・賃金の原資を確保できるようになる。
  ・過度な値下げ交渉を回避できる。

(3)施工体制の適正化
 ・施工体制台帳の適正化:作成義務の変更に対応し、適切な作成・管理を実施する。
 ・監理技術者の兼任条件を確認し、現場配置を見直す。
 ・ICT活用により施工管理を効率化する。
<期待できる効果>
  ・施工管理台帳のデジタル化により、書類の提出業務を効率化できる。
  ・監理技術者の兼務により受注できる件数が拡大する。

(4)工期設定の適正化
 ・適正な工期を確保するための基準を契約に明記。
 ・発注者との間で工期変更について協議するルールを設定する。
<期待できる効果>
  ・極端な短工期の要請を回避できる。
  ・適正な労働時間で働きやすい環境をつくれる。

(5)契約管理の強化
 ・(1)~(4)までに関する基準や運用ルールを契約書に明記する。
 ・契約書に記載されない発注者との合意事項を文書化する。
<期待できる効果>
   ・発注者との間で対等な協議がしやすくなる。
   ・契約条件が明確になり、トラブルを未然に防げる。

<ここまでのポイント>
・改正法対策では社内ルールや業務フローなどの見直しがマスト。
・改正内容を契約書に明記し、発注者との取り決めを行うことも必要。

改正建設業法対策の事例

 改正法対策で必要になる業務フローの見直しの事例を紹介します。いずれも手作業で対応しようとすると負荷が大きくなります。DX・デジタル活用による対策が効果的です。

積算見積の標準化

 明確な積算基準や内訳明細の作成が求められるようになります。以下は、積算見積にあたって対応すべきポイントです。経験則や属人化した見積方法から、標準的な積算方法への転換が必要になります。設備業に対応した積算見積システムを活用すると、複雑な内訳明細を簡単に作成でき、見積担当者による属人化なども回避できます。

・労務費の歩掛に対するスキル向上
・材料費の適正な価格設定
・安全衛生経費などの間接費などを明確化
・原価労務工数の把握

参考ツール:[本丸EXv2]設備業向け工事積算見積システム

実行予算による原価管理

 資材価格変動の価格転嫁に対応するためには、適正な原価管理が求められます。見積から実行予算を作成して管理することで、以下の効果を期待できます。

・工事の進捗に応じた原価管理
・労務費の実績の把握
・材料費や経費の無駄の削減
・工事ごとの利益の可視化

参考ツール:[二の丸EXv2]設備業向け工事原価管理システム

<ここまでのポイント>
・手作業では負荷が大きいのでDX・デジタル活用が効果的。
・積算見積の標準化により労務費の適性化や内訳明細作成を省力化できる。
・実行予算による原価管理で資材価格変動への対応が容易になる。

法改正を経営体質強化の機会に変える

 建設業法改正は、対応できない場合にはリスクがある一方、適切に対応できた事業者は経営基盤の強化や競争優位の確立といった効果が期待できます。つまり、単なる法令遵守にとどまらず、自社の経営改善の重要な機会ととらえるべきです。

 たとえば、適正な価格設定と工期設定によって取引の透明性が高まり、取引先との長期的な信頼関係を構築できたり、雇用条件の整備やスキルアップ促進が、人材の確保と組織全体の競争力向上につながったりします。改正法の目玉ともいえるデジタル化の推進によって、業務効率を向上させ、収益性を改善することも期待できます。

 まずは法改正の内容を正しく理解すること、次に自社の現状を把握し、優先順位をつけることから始めましょう。今回の法改正は建設業の商習慣を抜本的に変える内容になっており、会社の状況によってはすべてを一度に対応するのが難しい場合もあるでしょう。そういった場合でも対応できない状況を放置することなく、段階的に進めていくことで持続可能な成長の第一歩につなげられます。

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