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 公共工事の入札には予定価格の事前公表する物件と事後公表する物件があります。昔ながらの「勘と経験」に頼った方法で収益を確保しつつ、落札するのは難しいでしょう。限られた期間内で効率よく見積金額を算出し、利益を確保しつつ落札できる入札価格を見極めるには積算スキルが求められます。

 入札の勝率を上げるための具体的な戦略と、経費計算ツールと最低限の積算スキルで、効率的に入札準備する方法を入札初心者にもわかりやすく紹介します。

目次
-予定価格の事前公表制度と入札への影響
 公共工事の入札における予定価格とは
 予定価格が事前公表される入札はどうなる?
-入札で勝つために必要な積算スキル
 予定価格の基本的な考え方と変動要素
 利益を確保しながら落札するポイントは「経費」
-手作業の積算から脱却!経費計算ツール活用のメリット
 手作業の入札価格算出のデメリットと経費計算ツールのメリット
 公共工事経費計算ツール「Smart-P」でできること
-基本的な積算スキルと経費計算ツール活用で勝率アップへ

予定価格の事前公表制度と入札への影響

公共工事の入札における予定価格とは

 公共工事では、発注者が工事の完成に必要と考える適正な価格として「予定価格」が設定されています。予定価格は、国土交通省の「公共建築工事積算基準」などに基づいて積算されています。

 一昔前の入札はシンプルな価格競争で、もっとも安い価格を提示した業者が落札する方式でした。 2009年頃から品質維持とダンピング防止を目的として、予定価格の一定割合(通常70~90%程度)を下回る価格での入札を無効とする「最低制限価格」の活用が推奨されるようになりました。その後、段階的に見直され、2022年にはダンピング対策を徹底する狙いで、最低制限価格の算定基準の変更や適用範囲の拡大などの施策が実施されました。下表は最低制限価格の国土交通省の算定式ですが、発注者によって変更される場合もありますので、常に最新の情報を把握する必要があります。

最低制限価格(低入札調査基準価格)の算定式

直接工事費 予定価格の97%
共通仮設費 予定価格の90%
現場管理費 予定価格の90%
一般管理費 予定価格の68%
上記の合計を最低制限価格とする

出典:国土交通省/令和4年4月以降の基準

予定価格が事前公表される入札はどうなる?

 予定価格が事前公表される入札では、参加者全員が同じ情報を持った状態で競争するため、最低制限価格付近に入札価格が集中し、狭い範囲での価格競争が行われます。わずかな価格差が落札を左右するため、適切な積算による精度の高い価格設定と効率的な施工計画による経費削減が重要になります。

 しかし、精密な積算ができても必ず落札できる保証はなく、落札できなければ、入札準備にかけた時間や労力は意味がなくなります。積算の精度を維持しつつ、効率的に入札価格を決定できる方法を考えることをお奨めします。

<ここまでのポイント>
・落札できなければ、入札準備にかけた時間や労力は意味がない。
・積算の精度を維持しつつ、効率的に入札価格を決定できる方法を考えるべき。

入札に勝つために必要な積算スキル

 入札では、限られた価格帯の中で利益を確保しながら他社よりも低い金額を算出しなければなりません。そのためには、材料費、労務費、経費の適切な計算方法を理解し、他社との違いを出すポイントを把握することが不可欠です。

予定価格の基本的な考え方と変動要素

 設備工事の予定価格の積算は、純工事費(直接工事費+共通仮設費)に現場管理費率を乗じた現場管理費、さらに一般管理費等を加算して決定されます。積算の基本的な考え方をおさらいします。

参考記事:効率重視の入札対策は、予定価格を事前公表する物件が狙いめ!

利益を確保しながら落札するポイントは「経費」

 材料費や労務費は市場価格や公的基準があるため、見積では大きな差が生まれにくくなっています。
しかし、経費計算では実際の施工では把握しずらい、公共工事積算ならではのルールがあります。これを正確に把握することで、精度の高い経費計算を実現することができます。

ここでは経費を算出する際、特に注意すべき点は変動要素を計算に含める点と経費計算の補正について解説します。

<変動要素の計算方法>

変動要素 計算方法の例
発生材処分費 共通仮設費率・現場管理費率の対象額に含めずに率計算を行う。
有価物売却費 共通仮設費率・現場管理費率・一般管理費率の対象額に含めずに率計算を行う。
複合工種 建築工事・電気設備工事・機械設備工事が混在している工事の場合、それぞれの経費の計算式により共通仮設費・現場管理費を計算し、一般管理費は主たる工事の計算式を採用して計算する。
とりこわし工事 建築改修の経費率を採用して計算する。
その他工事 ※令和4年までの共通費積算基準
指定された外注工事に関しては、通常の共通仮設費率・現場管理費率を使用せず、それぞれ1%・2%を用いて計算する。主にリース料等、積上げ分、離島調整費対象額など。

<経費計算の補正項目>

補正項目 補正方法の例
監理事務所の有無 建築工事の場合、監理事務所無しだと共通仮設費率に0.9を乗じる。
前払金支出割合 前払金支出割合が以下の時、一般管理費等に以下の補正係数を乗じて計算する。
25%超~35%以下:1.01
15%超~25%以下:1.03
5%超~15%以下:1.04
5%以下 :1.05
契約保証費 工事原価に以下の契約保証費率を乗じ算出した金額を一般管理費等に加算する。
金銭的保証を必要とする場合:0.04%
役務的保証を必要とする場合:0.09%
上記の方法以外      :補正しない

<ここまでのポイント>
・材料費や労務費は市場価格や公的基準があるため、見積では大きな差が生まれにくい。
・経費計算の精度を向上させることが、受注のためには重要。
・経費計算で特に注意すべきは変動要素と経費計算項目の補正。

手作業からの脱却!経費計算ツール活用の入札準備

 予定価格を事前公表する入札物件では、予定価格から最低制限価格を算出して、落札価格の範囲を推測できます。最低限価格をベースに入札価格を検討することができます。基本的な積算スキルと経費計算ツールがあれば、入札初心者でも対応できます。

手作業の入札価格算出のデメリットと経費計算ツールのメリット

 手作業による入札価格の算出のデメリットは、計算精度の低下です。事前公表の入札において、経費計算のスキルの有無などによって、その結果は大きく変わってきます。また、特定の担当者に依存することで、属人化の問題も生じます。

 

 そうした課題を解決できるのが、公共工事専用の経費計算ツールです。ツール内に組み込まれた計算式で複雑な経費計算を自動化でき、基本的な積算スキルがあれば、入札案件の経験がなくても入札価格の算出ができるようになります。経費計算ツールを使うメリットと経費計算ツールに必要な機能を紹介します。

<経費計算ツールを使うメリット>
・経費計算にかかる時間を大幅に短縮できる
・経費計算の正確性が向上する。
・計算過程が明確に記録されるため、後から検証や修正を行う際にも役立つ。
・担当者による計算方法の違いを排除し、積算基準による経費計算を社内標準化できる。

<経費計算ツールで最低限必要な機能>
予定価格が事後公表される入札では入札価格を決める際に、直接工事費の正確な根拠が必要になりますが、予定価格を事前公表する入札で正確な経費計算ができる機能があれば充分に対応できます。

①経費逆算ができる
予定価格から逆計算で、直接工事費、共通仮設費、現場管理費、一般管理費を算出できる。

②変動要素・補正条件を含めた計算ができる
最低制限価格を正確に算出するために、変動要素や補正条件を加味した経費逆算ができる。

③発注者(自治体)に合わせた算定式を使うことができる
自治体ごとの最低制限価格の算定式を使用できる。

④共通費積算基準の使い分けができる
事業年度、工種別(営繕工事・公共住宅工事・土木工事)などの積算基準を使い分けられる。

公共工事経費計算ツール「Smart-P」でできること

 公共工事経費計算ツール「Smart-P」は、国土交通省の積算基準に準拠した経費計算を自動的に行えるツールです。「工種(営繕工事・公共住宅工事・土木工事)」、「計算方法(順算・逆算)」、「要素(物件情報、予定価格)」を入力するだけで、入札の最低制限価格を正確に算出できます。地域補正や工期補正などにも対応しているため、より精密な積算が可能になります。手作業で3時間以上かかる経費計算が30分で完了し、計算ミスが大幅に削減された事例もあります。

変更登録機能 発注者(自治体等)ごとの最低制限価格の算定式を登録する機能。
ランダム入札統計機能 ランダム係数を用いた入札結果を記録し、傾向分析する機能。
総合評価方式シミュレーション機能 総合評価の項目を発注者ごとに作成し、各社の数値を記録してシミュレーションを行う機能。
結果保存機能 入札結果を保存して集計し、不落札原因を分析する基礎資料とする。
出力機能 算出結果を印刷およびファイルに出力する機能。
公共土木工事共通費積算基準に対応 管工事、電気工事の経費計算に対応。
見積画面からの連携 積算見積システム「本丸EXv2」の統括画面から経費計算ツールを起動でき、経費計算の結果を「本丸EXv2」で作成中の見積に反映できる。

Smartの概要:[Smart]公共工事経費計算ツール

<ここまでのポイント>
・経費計算ツールの活用で基本的な積算スキルがあれば、入札価格を算出できる。
・予定価格を事前公表する入札では経費計算の順算・逆算ができれば充分。

基本的な積算スキルと経費計算ツール活用で勝率アップへ

 公共工事は受注できればメリットの大きい仕事ですが、落札できなければ準備に費やした時間や労力が無駄になるリスクがあります。落札するためには積算の精度を高める必要がありますが、手間をかけても落札できない可能性はあります。この点は難しいところで、積算の精度と効率化のバランスをうまくとれるようにしたいですね。

 そうした条件にあてはまるのが、予定価格を事前公表する入札物件です。

 そして、入札の勝率をアップするには経費計算ツールだけでなく、自社の施工能力や得意分野にマッチし、利益を確保しやすい案件を選択したり、競合が少ない自治体を選んだりするなど、対象物件の選定はとても重要な要素です。さらに、落札結果の分析や業務効率化による経費削減なども不可欠です。特に、落札できなかった案件の計算要素の詳細内容の分析が必要です。また、落札した案件では実際の入札結果と積算内容を比較して精度向上に努めることで、長期的な競争力の向上を図ることができます。

経費計算ツールを活用して、販路拡大をめざしましょう!

公共工事経費計算ツール『Smart-P』

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