【入札対策】低入札価格調査基準の計算式改定、入札の勝率を上げるポイント
令和4年度入札・契約の実施方針と入札対策のポイント
低入札価格調査基準の改定を含む令和4年の取り組みは、令和元年10月の公共工事の入札及び契約の適正化の促進を受け、継続的に実施されます。
参考:公共工事の入札及び契約の適正化の推進について(国土交通省)
(1)令和4年度の取り組み
各省庁、地方公共団体ごとに差異はありますが、適正化の方針は同じです。国土交通省関東地方整備局では4点が掲げられています。
①透明性の確保
災害時などを除き指名競争入札を廃止、すべての工事で総合評価落札方式を実施。不正が発生しにくい制度を適用。
・予定価格作成時期の後倒し
・入札書と技術提案書を同時に提出する
・総合評価落札方式の積算と技術審査・評価の業務を分離する
・技術提案書の業者名マスキングを徹底する
出典:令和4年度 入札・契約、総合評価の実施方針(案)[工事](国土交通省関東地方整備局)
②効率的な事務手続き
総合評価落札方式は、施工能力を評価する「施工能力評価型」と技術提案を評価する「技術提案評価型」の二区分を併用。
③企業の技術力が十分発揮できる競争環境の確保
地域要件や評価配点を明確化し、ダンピング受注対策、不調・不落対策、担い手育成・確保、働き方改革、品質確保、生産性向上、技術力の向上の各施策に応じて、入札・契約および総合評価を実施。
④維持管理面を重視した工事の品質確保
維持工事等の複数年契約、維持管理付き工事発注方式、特定事業者と特命随意契約を実施する方式、地域維持型JVを活用。
(2)総合評価落札方式
総合評価落札方式は、公共工事の品質低下や環境破壊を防止する目的で導入された、価格と技術力などの要素を総合的に評価する落札方式です。技術力の評価が高ければ、より入札価格が低い業者があっても落札できます。
出典:公共工事発注にあたっての総合評価落札方式活用ガイド(国土交通省国土技術政策総合研究所)
除算方式 | 評価値=技術評価点÷入札価格 入札価格以外の要素を、仕様上の要求要件に関する「基礎点もしくは標準点」と付加価値にあたる「加算点」を合計した「技術評価点」として数値化します。技術評価点を入札価格で割った「評価値」が大きいほど高い評価になります。 |
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加算方式 | 評価値=技術評価点+価格評価点 「技術評価点」と入札価格を数値化した「価格評価点」の合計が評価値となります。価格評価点は入札価格が低いほど高くなります。国土交通省にて試験採用中。 |
(3)2022年度の入札優遇制度
2022年度は、賃上げに関する入札の優遇措置が設けられています。基準を満たした事業者には、総合評価落札方式の加算点が5%上乗せされます。優遇には会社と労働組合の代表が署名した書面の提出が必要で、税務申告時の賃上げ率が基準に達しなかった場合は、次の1年間の入札で加算分よりも多く減点されるペナルティがあります。
<優遇措置の基準>
大企業:全従業員の平均給与の3%以上
中小企業:給与総額の1.5%以上
※賃上げ率の算定対象は基本給のベースアップと賞与
(4)最低制限価格を左右する経費計算
国および地方自治体の入札で適用される低入札価格調査基準のほか、地方自治法にもとづく最低制限価格制度があります。最低制限価格の料率は自治体ごとに設定されますが、低入札価格調査基準の率が流用されることが多いです。
最低限度価格の算定は、積算見積で算出した金額を100%(以下、積算金額)とし、それに項目ごとに定められた率を乗じます。今回の制度改正ではこの「一般管理費」の部分が引き上げられました。
直截工事費 × 97%
共通仮設費 × 90%
現場管理費 × 90%
+ 一般管理費 × 68%
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上記の合計:最低制限価格
積算金額に「その他工事」「リース料」「発生材処分費」「有価物売却費」などの変動要素が含まれる場合、最低制限価格の計算式の元となる金額が変わるため、計算結果も変わってきます。この結果が最低制限価格に強く影響します。落札に関わる場合には注意が必要で、逆の見方をすればチャンスの物件であるともいえます。
<ここまでのポイント>
・総合評価落札方式は、価格と技術力などの要素を数値化して総合的に評価する。
・ダンピング受注対策として低入札価格調査基準を改定。
・正確に最低制限価格を算出するポイントは変動要素。